前巻感想はこちら↓
読書感想:クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で隣に立ちたいと願い、少しずつ。まるで歩くような速さで変わりだした真樹と海の関係。その在り方は正に等身大であり、だからこそ地に足の着いたラブコメがこの作品では展開されている。では先に進む為には何に立ち向かわなければならぬのか。前巻で海の過去には光は当てた。では何に光を当てねばならぬのか。その答えとは、真樹に関わる事情である。
「お前ってすげえヤツだったんだな」
少しずつ、海の側に居る為に。まるで歩くような速度で変化していく。海と関わる事で、周囲にも彼の良さが知られていく。それは真樹の級友であり海に好意を抱く野球部のエース、関君が始める前から敗北を悟るくらいには。クリスマスを前に、年末に向けて勉強したり、クリスマスパーティで裏方として駆け回ったり。色々な事に前向きに向き合えるようになった真樹は、賑やかだけれど眩しい日々を過ごしていく。
だが、恋とは綺麗なもの、だけではない。子供の恋は綺麗なものであるのかもしれぬ。だが大人の恋は子供のそれに比べて複雑である。離婚を機に離ればなれになった真樹の両親。母親の休職、そして父親の側に居る新たなパートナー候補の女性の姿に、真樹の心はこれでもかと揺れていく。
言いたかったことがあった、叫びたい事があった。だがそれは、もう叶わぬ事。だがそれでもと、しがみつきたくなってしまうのは子供ゆえの心。海の家族の仲の良さを目撃し、かつて自分の元にもあったその光景を幻視し。子供が向き合うには大きいものに、心は揺れ惑う。
「なら、別にこんなふうに誰かに甘えたってギリギリ許されるよ、多分」
そんな彼の心を海は支える。まるで聖母のように、受け止めて甘やかす。それは前巻、彼が支えた事の裏返しの様に。そして彼女の支えを受け、約束の場であるパーティの場で。真樹は言えなかった我が儘を、父母に告げる。例え届かないと心の何処かで理解していても、終わらせるために。自分の心に刺さっている棘を抜くために。
「でも、意外としっくりくるかも」
「でしょ。私たちにお似合いだ」
そして全部が終わった後、まるで導かれるかのように、惹かれ合うかのように。歩く速度を重ねて、並び立って。ようやく二人の関係は一歩前進の時を迎えるのである。「友達」という関係の名前から、「恋人」という関係の名前に変わるのである。
まさにお似合い、そこに至るまでの速度はのんびりと。だが爆速で進展しないからこそ、ゆっくりと育んだからこそ。彼等だけの関係に辿り着けたのであろう。だがまだまだ、日々はこれからである。
シリアスな切なさと重さが、もどかしい甘さを引き立てる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった2 (角川スニーカー文庫) | たかた, 日向 あずり |本 | 通販 | Amazon