前巻感想はこちら↓
読書感想:きみは本当に僕の天使なのか - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。今巻の表紙を務めている麗の元相棒、杏樹の携えている赤色の彼岸花。この花の花言葉をご存じの方はどれだけおられるであろうか。その花の花言葉は「情熱・独立・再会・あきらめ・悲しい思い出・想うはあなた一人・また会う日を楽しみに」。 列挙するとこれだけあるが、この花言葉をどうか今だけご記憶願いたい。この言葉が重要な要素となるので。
さて、前巻で私はこの作品を「闇」の物語であると評したが、今巻では前巻で闇の元凶を大分払えた事で、その闇を減少させる事に成功させている。ではその闇の代わりに見えてくるものは何か。
それはスポ根にもつながる熱き要素。その戦うべき好敵手は、挫けそうな自分である。
「そんな嫌な顔しなくてもさぁ」
前巻の騒動の後、仮初の恋人関係は切れた筈だった。しかし優羽は多忙を極める真央のマネージャーとして彼女のポケットマネーにより雇用され、簡単な業務や麗のケアを担当することになり。結果的に麗は優羽の家に入り浸る事が続く日々。
しかし、芸能界の闇の一端を蹴散らし道を開いた事で麗の心の中には、「ripqle」再結成への願いが芽生え。交渉要員として優羽は杏樹の元へと送り込まれる。
「麗ちゃんから・・・・・・逃げたんだよ」
しかし、杏樹は何故逃げたのかと言う真実と麗への複雑極まる思いを語り優羽を突き放し。次の手に思い悩む中、真央の紹介により二人の先輩である現タレント、アンナに話を聞きに行ったら気に入られ。ある意味密会でもあるその現場を麗に目撃された事で、優羽と麗の間に若干のすれ違いが生じてしまう。
「それでも・・・・・・楽しかったんですよね?」
誤解を正す暇もなく、爆発した麗に引きずられるかのように杏樹の元を再び訪れ。偽らざる自分の激情を吐露し杏樹を求める麗の背を押し、杏樹の心の中の望みに気付かせ。もう一度彼女を表舞台へ立たせる事は決まる。
だがしかし、話はそう簡単には進まなかった。サプライズライブを成功させる条件として提示された、キャパシティーの八倍以上のとんでもないハードル。更には麗の病気によるダウンと、予想外の窮地はどんどんと襲い掛かってくる。
諦めたくない二人を支えるのは誰か。支えの一端となるのは真央の大人だからこその夢、そしてもう一端は、優羽のファンとしての、そして人間としての純粋な心。
「それでも、僕は、君に救われたんだ」
「おあいこだよ」
しかし、全てを無事に乗り切った先。優羽の過去が明かされた時、衝撃の事実が明かされる。「彼女」が優羽にとって本当はどういう存在であったのか。「彼女」こそが本当の意味で始まりだったのだ、という事。
嗚呼、これを運命の悪戯と呼ぶならそうだろう。しかし何処か残酷で、悲壮感すら漂う真実があるこの悪戯は、果たして幸運かそれとも不運か。
前巻を楽しまれた読者様は是非。きっとここからが本当の始まりであるのだから。