読書感想:恋を思い出にする方法を、私に教えてよ2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:恋を思い出にする方法を、私に教えてよ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、「魔女」との契約により恋を食べてしまう異能を得た孝幸と、その相棒となった葵が今巻でも新たな事件に立ち向かっていくわけであるが、画面の前の読者の皆様はこうは思われたことは無いであろうか。 そも、孝幸以外に魔女と契約した者はいないのかと。答えを言ってしまうのならば、いる。それこそが今巻で登場する相談者でもある孝幸の「同類」、礼菜(表紙)である。

 

 

相棒同士となった孝幸と葵、そこに持ち掛けられた孝幸の友人である稔からの依頼。それは「都市伝説」に恋をした、というもの。その名も「ダレカさん」、関わって暫くすると覚えておこうとしても記憶から消えてしまう、というどこか奥歯にものが挟まったような都市伝説である。

 

「貴方の許嫁です」

 

 どう探したものかと首をひねりながらも、とりあえず近所の女子中学生から持ち込まれた依頼の解決のために、合流場所へ向かう二人。しかしそこで待っていたのは孝幸の許嫁を名乗る謎の少女、夏鈴。その保護者として現れたのが礼菜である。

 

彼女が口にしたのは孝幸の祖父の名、その名を知っていると言う事実に警戒するしかなく。そんな彼へ礼菜はきちんと夏鈴と向き合ってくれたら話すと嘯き、結果的に孝幸は稔の為にも彼女達と関わることになってしまう。

 

 「ある人」から頼まれた「許嫁」という設定を守り抜き真っ直ぐに接してくる夏鈴。彼女と関わり、いつも通りに「アドバイザー」として稔と礼菜を繋げたり、葵の先輩である凛子の恋を繋げたり。そんな彼等の姿を見る中で、夏鈴と礼菜の思いが揺れていく。

 

「佐藤さん、ヒーローになるなんて夢は、この場で諦めてください」

 

夏鈴が隠していたのは孝幸の祖父と繋がる過去。祖父が死んでしまう原因を作り、それにより迫害されながらも最後に託された願いを伝えようという思い。

 

「じゃあ、元気でね」

 

そして彼女を見守る礼菜が秘めていたのは、忘れられぬ恋。死の淵で魔女と契約し、世界から忘れられる代わりに永遠の命を得た彼女が、現世にとどまり続ける理由。もう叶う事もない、けれど無くしてしまえば消えてしまう恋。

 

「まったく、未練と優しさの味がするぜ」

 

 終わりは必然、今は只モラトリアム。そして終わらせなければ、一番悲しい形で終わってしまう。だからこそ、己の幻像を踏み躙り、相応しくないと嘯きながらもヒーローである事を選んだ孝幸は彼女を終わらせる。ビターだけれど、最高の救いがある形で。

 

その果てに生まれる、葵の中の言葉に出来ぬ思い。その思いは何を齎すのか、彼等の関係に。

 

前巻を読まれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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