読書感想:クラスのぼっちギャルをお持ち帰りして清楚系美人にしてやった話3

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前巻感想はこちら↓

読書感想:クラスのぼっちギャルをお持ち帰りして清楚系美人にしてやった話2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、いずれ来る別れは、まだ影を見せずとも根底に確かに影を落とす。そんな状況で繰り広げられる晃と葵の、どこか切なさもあるこのラブコメ。前巻で父親との和解を果たし、祖母の家という自分と別れても大丈夫な「家」を準備出来て。少しずつ状況は好転している訳であるが、続いては一体、何と決着をつけるべきか。それ即ち、全ての事態の元凶である葵の母親との対決。毒親としかいいようのない、どうしようもなく最低な親との決別を果たさずして、別れる事は不可能と言ってもいいのである。

 

 

ドタバタと大冒険の夏休みが終わり二学期。迫ってくるのは学生にとっての一大イベント、学園祭の季節。晃のクラスの出し物は泉の根回しにより、「和風金髪ギャル喫茶」という悪魔合体にも程がある不思議な出し物へと決定し。更には周囲の根回しと葵の意思により、晃と葵は共に学園祭実行委員を務める事になる。

 

 メニューの選定のために共にスイーツを食べに出かけたり。接客の勉強をする為に共にバイトに励んだり。学園祭をダシに、いつもと変わらぬイチャイチャを繰り広げる二人。だが、波紋はすぐに訪れる。あの日姿を消した葵の母親が、どの面下げてと言わんばかりにふてぶてしく現れたのである。

 

葵への愛を嘯き、また一緒に暮らそうと言う母親に怒りが湧けど、親権者であるが故に手出しは出来ず。もう一度だけ信じてみたい、と葵は母親の元へ出向く。

 

だが、やはり毒親は簡単には変わらなかった。寧ろもっと悪化していたと言ってもいい。連絡を絶たれ不安と共に彼女の元へ駆けつけ。憔悴した彼女が言ったのは、また姿を消した母親に父親からの養育費を奪われてしまったと言う最低な事実。

 

「私はもう、お母さんとは一緒にいられない」

 

 最早許してはおけぬ、大切なのは許さぬ事だとしても、許してはいけぬ事もある。父親を呼び寄せ対応を頼み。今度は形勢を逆転させて向かい合い、葵は母親に毅然と決別を叩きつける。

 

なればもう、あとは後顧の憂いなし。また学校に復帰し、皆で急いで準備を整え。当日、晃がちょっとした黒歴史を作ってしまったり、想定外の窮地を皆で居残りと言う青春イベントを体験したり。一気呵成に駆け抜ける、一瞬の時間の中。親友達の言葉を切っ掛けに、晃は葵への思いに名前を付ける。

 

「私は晃君さえ傍にいてくれればいい。それだけでいいの」

 

 ・・・しかし、晃の心に葵の一言が不穏の波紋を投げかける。その言葉に込められたのは、同じ恋心なのか。それは、「依存」という方向に進むだけではないのか。いずれ別れが来るとして、本当に大丈夫なのか。

 

一難去ってまた一難、ぶっちゃけありえ、なくはない。成長と瑞々しい甘さの中にまだまだ揺らすよと言わんばかりに攻めてくる今巻。

 

シリーズ読者の皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。