前巻感想はこちら↓
読書感想:あなたを諦めきれない元許嫁じゃダメですか?2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
翼のあの日から続く恋。麗奈の寄りかかるかのような恋。そして育美の、今再び燃え上がるもう一度繋がる恋。
上述の一文は、二巻の私の感想記事から抜粋してきた一部であるが、前巻の最後でようやく参戦した三人目のヒロイン、育美についてまだ把握しきれていない読者の方はどれほどおられるであろうか。
あなたを諦めきれない元カノじゃダメですか?(桜目禅斗) - カクヨム (kakuyomu.jp)
育美についての人物像は上記の外伝を参照してほしい。
言うなれば、翼は優しく寄り添い支える「太陽」のよう。麗奈は気紛れなように見えて、実はずっと隣を吹き抜ける「風」のよう。そして育美は、言うなれば「炎」。阻む者全てを燃やし尽くすまで止まらない、七渡を引っ張り込んで縛り付け、自身の炎で焼け跡にして染めるような少女である。
三日だけとは言え、彼女は七渡の元カノである。そして今、誤解も解けてまた二人は向き合いだした。
言うまでもない、育美という恋敵は強敵に過ぎる。なればどうするか。翼と麗奈が選んだ道は共闘。二人で七渡に寄り添い、彼の心をこちらへと引き戻さんとする道である。
「返さなくていいから、黙って受け取りなよ。もう終わった人なんだから」
「・・・・・・終わってなどないのだけど。何も知らないくせにわかった風なこと言わないで」
三人での初邂逅、軽くなれど確かに交わした言葉の刃。育美の肩を持つ七渡を見て、二人の心に溢れ出した悔しさ。
だが、それで止まる二人であるわけがない。この程度で折れるのならばとっくの昔に折れている。二人は七渡を含むいつもの面子で向かった夏休みの泊りがけの旅行で、七渡にとっての最高の夏休みを演出すると言う作戦に打って出る。
皆で向かった海水浴。温泉に旅館。
「七渡君のこと、何でも受け入れるから」
「それがウチの想いだよ」
二人きりとなった時間の中、翼の両親への顔合わせもあり揺れる七渡へ翼は告げる。私は貴方の側にいる。貴方の還るべき場所になると。
「我慢できなくなったら、全部受け止めてあげるから」
麗奈は告げる。貴方の一番側にいたい、例え悪友で終わるとしても、と。
育美を交えぬ、二人だけの攻勢。だがそれを黙って許す育美であるわけもない。育美もまた。自らの策を繰り出す。
「私が勝ったら、あなたの夏休みの一日を頂けないかしら?」
勝負の結果を盾に七渡を連れ出した先のナイトプール。自分だからこそいける場所で妖しい大人っぽさで七渡を誘惑し。
「・・・・・・もう、諦めた方が良いんじゃないかしら?」
怒る麗奈を言葉で殴り切り裂き、彼女の心を傷つける必殺の一撃を放つ。彼は私のものだ、お前には渡さないと言わんばかりに。
前巻までのほのぼのとした空気は、もうない。だがそれもまた必然。恋とは戦争。故に育美の参戦により、本当の戦いの号砲は今、高らかに鳴らされた。
「七渡は私が幸せにするから、あなたは身を引きなさい」
「七渡君を大事にできなかった人に任せるのは不安です」
そして今、麗奈の想いも背負って翼が育美の前に立つ。そう、正に恋の戦争の新たな段階はここから始まる。引金はもう引かれてしまった、故にもう止められぬ。
美波や柚癒達が揺れ惑う中、戦争の舞台に役者は揃い、本当の戦いの幕は上がる。
シリーズファンの読者の皆様、やはりラブコメが好きな読者様は是非、未読の読者様は三巻纏めて是非に。
show must go on。
本当のお楽しみは、ここからである。
あなたを諦めきれない元許嫁じゃダメですか?3 (角川スニーカー文庫) | 桜目 禅斗, かるたも |本 | 通販 | Amazon