読書感想:高度に発達した現代工学ならば魔法すら打ち破れる

 

 さて、スターライトブレイカーと言えばなのはの必殺技である。なのはと言えば誰かと言われると魔法少女リリカルなのはの主人公である。しかし今の時代、リリカルなのはの事をご存じな読者様はどれだけおられるのだろうか。その答えは分からぬが、それはともかく魔法と言う物は物凄いものである。そんなものに科学は対抗できないのであろうか。否、そんなことは無いのかもしれない。高度に発展した科学は魔法と区別がつかないと言うのならば、きっと勝つことも出来るはずである。

 

 

とある工業高等専門学校に通う少年、鷹久(表紙左)。妹であるすずめ(表紙右)との仲が最近冷え込み気味、しかし高専の仲間達との日常は輝き気味。そんなある日、彼はクラスの仲間達の記憶が一斉にごっそり抜けると言う妙な事態に遭遇していた。

 

 現代科学でも、勿論工学でも説明がつかぬ事態。だがある日、夜の公園で。彼は異世界からの来訪者、ペンフィーネ(表紙中央)に力を貸し魔法少女として戦っていたすずめを目撃する。

 

ペンフィーネに説明されたのは、古代の魔導アイテムと逃走した犯罪者であるキルシュ兄弟を追い、自分は「世界間維持機構」の一員として来訪したという事。自分達は記憶を代償に世界の記憶を書き換える魔法の力が使える。そしてすずめは類まれなる資質を持ち、現地協力者となって貰っていたという事。

 

「なら工学の力を頼るまでだ」

 

 そんな事態を許すわけにはいかぬ、だが犯罪者を放置するわけにもいかぬ。だが魔法の使えぬ鷹久に何ができると言うのか。・・・否、彼には何でもできる力がある。それは工学の力。頼れる仲間達とペンフィーネに協力を願い、AIの力で画像解析をする事で索敵したり、パワードスーツに疑似的な力を持たせると言う方法で。工学の力で魔法に立ち向かっていく。

 

すずめも屈しかけた兄弟の片割れ、「拒絶」の固有魔法を使うカルチフィを捕らえ。ペンフィーネの要請を受け駆けつけた制圧官、アルエットの度肝を抜き。残るもう一人を捕らえるべく、ペンフィーネに癒されながらも方策を練る鷹久。

 

 その裏、鷹久の知らぬ間に彼を中心に巡るのは、すずめの、アルエットの思い。辛い過去を持ち彼に寄り掛かり、そんな自分を封じようとしたすずめの重い愛、かつて任務の中で兄を亡くし、その面影を鷹久の中に見つけ縋ろうとしてしまうアルエットの重い愛。二つの愛は並び立たぬと言わんばかりに、二人は激突し、相互理解のためにぶつかり合い。その裏、鷹久は決死の覚悟で記憶が失われゆく中、残る片割れと対峙する。

 

勝敗を決める最後の切り札となるものは何か。それは工学の力、愛の力。否、最後の切り札は人が誰でも持っている気持ち。抑えきれぬ未知への気持ち。

 

「世界一、かっこいいよ」

 

何も覚えてはいない、けれど確かに彼は掴んだものがある。遺した戦果がある。それはすずめの心の中、蓋をしていた気持ちを燃え上がらせる。

 

アイが重いヒロインと熱いバトル、二つの面白さが同時に楽しめるこの作品。正に一度で二度おいしいと言えよう。

 

愛が重いヒロインと熱いバトルが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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