読書感想:転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?3

 

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読書感想:転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の刊行より九か月。前巻の好敵手同士としての鎬の削り合い、真っ直ぐなぶつかり合いを楽しまれた読者様も多いであろう。・・・この先も何か希望のある事をお伝えしたいのであるが、表紙の色相に何か不穏を掻き立てられる読者様も多いのではないだろうか。そう、前巻を経てお忘れになってはいけない事がある。かの最悪な「妹」はまだ何処かにいる。それは学園の外か、内かは分らぬけれど。確かにヤツは何処かにいるのである。

 

 

そんな事は露知らぬジャック達の見守る先、一つの宣言が世界に波紋を投げかける。それはトゥーラ学院長の引退宣言。エルヴィスとのエキシビジョンマッチを制した彼女は引退を高らかに宣言し、次の「霊王戦」で最強を決めるがよいと言ってしまったのである。

 

当然のごとく国は揺れ、後釜の座と実権を巡り貴族たちが動き出す。その最中、エルヴィスに声をかけられジャックは彼と二人、民主派の悪名高き女侯爵、ラヴィニアの屋敷へと潜入を試みる事となる。

 

 違法な人身売買の証拠をつかむ為に始まる潜入作戦。だがその作戦は、侯爵の部下である謎の魔術師、アーロンの手によりダンジョンアタックへと変貌を遂げる。彼の手により創り出された、幾度となく死に戻れる館を舞台にした迷宮。死に戻る事で謎を解き、館を駆け回る事で武器を掴み。少しずつ真相に迫り、何とか証拠を手に入れダンジョンをクリアし。脱出に成功した二人は学園に舞い戻る。

 

では後は戦いに備えるだけ。霊王戦に向けて訓練を積み、フィルと改めて大切な絆を結び直し。トゥーラ学院長にも劣らぬ最強の戦力が集結し、更には貴族の思惑も相乱れる「霊王戦」は幕を開ける。

 

「・・・・・・これから皆殺しにしますけど、いいですよね?」

 

―――筈だった。その筈だった。ラヴィニアとの対決が、エルヴィスにとってのリベンジが、最強同士の戦いが待っている筈だった。だが、この瞬間「ヤツ」が来た。そして全てをひっくり返し、既に決まっていたシナリオも破り捨てて、彼女による、彼女の為のステージに作り変えてしまったのだ。

 

最強の者達も王太子すらもあっさりと殺され、そして「彼女」までもが骸に変わり。幕を開けるのは「霊王決戦編」に非ず。真の名は「○○○○編」。

 

再びアーロンの手により迷宮へと囚われる決戦場、その中で巻き起こる最強同士の悲しい対決。

 

だがこの絶望すらも始まりに過ぎず。ここからが本番。一体今度はどこまで絶望させられるのか。

 

刮目してみてほしい、この地獄のど真ん中を。

 

転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?3 (MF文庫J) | 紙城 境介, 木鈴 カケル |本 | 通販 | Amazon