読書感想:僕らは英雄になれるのだろうか

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 さて、この世界には「雨だれ石を穿つ」、「思う念力岩をも通ず」という諺があるが、実際のところはどうなのだろうか。しかし、何か一つの事をそれこそ限界を超えてまでやり込んだのならば、その成果はかけがえのないものであり、失敗を繰り返してしまうと、自分の力ではここまでと思い込んでしまい、結果としてその力を制限してしまうような事も起こり得る。ならば、やはり努力する事こそが大切な事なのであろうか。

 

 

無論、日常生活において努力をすると言う事は大切である。そして、ラノベ界には「友情・努力・勝利」という古典的な三原則がある。

 

 では何故こんな前置きとなっているのかと言うと、この作品は上記の三原則が溢れているからである。

 

次元の違う世界から襲撃してくる魔物、「アポリア」を様々な継投に分類される「異能」を振るう者達、「シーカー」が迎撃する世界。その養成校の最終試験で、かつて命を救われた経験からシーカーを目指す少年、大和(表紙左)は幼馴染である蕾愛(表紙右)に敗北し、不合格となってしまう。

 

「心配しなくても、君の才能は、私が見つけてあげますよ」

 

 身に着けた異能は、只一つの性能のみ。それでも来年又挑むと心を新たにする大和に声をかける男がいた。その名は真白。かつて己の命を救ってくれたシーカー、秋雨の息子である。

 

喜び勇んで向かった彼のクラスは、魔力を持たぬ少年に始まり人造兵器にいたるまで、正に個性派ぞろい。誰もが主人公と言わんばかりの曲者、一点特化の強者たちばかりのみ。

 

 そこは正に、はみ出し者達の集まり。しかしその集まりは、大和にとっては心地の良いものであった。時に切磋琢磨し、時に導かれ、時に力の使い方についてアドバイスを貰い。他クラスの才媛、アメリアに因縁を付けられたり、蕾愛と本気で戦ったり。かけがえのない日々の中、友情を育んでいく中で。大和は自身の力に込められた秘密、そして彼を見つけた秋雨の願いへと触れていく。

 

「なら、その遺志を、俺が引き継いでいいですか?」

 

彼が遺した、繋いだ希望。そこに遺された願い。その願いを知り、再び戦うと決意した彼の目の前、アポリアの大群に紛れ現れたのは秋雨を模倣した上位種。

 

 真白でも及ばぬ圧倒的な敵。それを打倒する力となるのは、何か。大和だけ、ではない。蕾愛と一緒、だけでもない。皆で時間を繋ぎ希望をつなぎ。一+一が二、そんな定説すらも覆す絆の力。皆の力を合わせ、希望と時間を繋ぎ。猛る拳が確かに届く時。英雄の萌芽が確かに始まるのである。

 

皆が皆、押しも押されぬ主人公。正に個性が大爆発、属性爆盛りと言わんばかりのこの作品。しかし真っ直ぐな王道であるからこそ。ど真ん中に面白いのである。

 

真っ直ぐに熱い作品を読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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