読書感想:一生働きたくない俺が、クラスメイトの大人気アイドルに懐かれたら1 腹ぺこ美少女との半同棲生活が始まりました

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 さて、最近の生き方の一つとして、「専業主夫」という生き方があるが、画面の前の読者の皆様もご存じであろう。今の時代はもはや令和、男が外で稼ぎ女が家を守る、なんて考え方はもはや昭和。稼ぎ方も守り方も人それぞれなのである。

 

 

そんな生き方を目指す少年と、彼に惹かれた少女。その二人のお話と言えるのである、この作品は。

 

とある過去と、放任主義的な父親との確執から専業主夫という夢を掲げる少年、凛太郎。彼のクラスには一人、有名人でもある美少女がいた。その名は玲(表紙)。大人気アイドルユニット、「ミルフィーユスターズ」のセンターを務める今を時めく大人気アイドルである。

 

 いつも皆に囲まれる彼女を、特に興味はないと言わんばかりに遠巻きに見つめる、いつもの何気ない日々。しかしそんな日々は唐突に変化を迎える。ある日の帰り道、空腹のあまりに行き倒れていた彼女を保護し、料理を振る舞った事により変わっていくのである。

 

「月三十万払う。だから毎日食べに来ていい?」

 

 

彼の料理に魅了された玲からの魅力的な提案を拒み切れず始まる半同棲生活。学校ではちょっと遠い距離の友達として基本的に関わらず、だが二人きりの家ではどこか甘く。何処かぽんこつだったり、無防備だったり。どんどんと距離を詰め、自分にしか見せぬ顔を見せる玲に翻弄される凛太郎。

 

更には、チームメンバーである夏音や美亜にまでお弁当を作った事から彼女達にも気に入られ。彼女達の提案により、同じマンションへと引っ越し、ほぼ一つ屋根の下と変わらぬ新しい生活が幕を開ける。

 

 皆で食卓を囲んだり、ホラー映画を見たり。またある時は玲と一緒に二人で出かけたりして。まさに「仲間」のように、彼女達に受け入れられていく凛太郎。そんな中、過去の忘れかけた幻影が心をよぎる中。彼は玲が抱える問題へと向き合っていく。

 

玲の父親から押し付けられているアイドルを務める為の条件。その条件を満たす為のライブが近づく中、プレッシャーに揺れる玲。彼女を見つめ、時に彼女達の支えとなっていく中で見つめ直す、専業主夫を目指す自分の始まり。

 

「その時は俺にだって、一緒に落ちていくくらいの覚悟はありますよ」

 

 そして、約束のライブ当日。崩れかけ自身に縋ろうとした玲を、敢えて自身から突き放す形で立て直させ。玲の父親へと、凛太郎は毅然と啖呵を切る。自分の意思で決めた、最後まで彼女と、それが例え地獄でも、という覚悟。

 

「うん、好きだよ。八年も前から」

 

そしてその裏、玲が秘めた恋心も動き出す。凛太郎が忘れた彼女の過去、そこで彼が笑顔をくれたから、その笑顔が自分を今ここに導いてくれたと言う感謝と恋。その恋を歌にし、彼女は本格的に彼を求め動き出す。

 

 正にこの恋は育む恋。ゆっくりと丁寧に醸成され、緻密に仕上げられた恋。そんな密やかな甘さがこれでもかと描かれているこの作品、正に温かく甘く、故に面白いのである。

 

密やかな甘さのあるラブコメが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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