読書感想:エルフに転生した元剣聖、レベル1から剣を極める

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 さて、画面の前の読者の皆様もご存じであると思われるが剣と剣がぶつかり合う、剣戟アクションというジャンルはその熱さを以て確かな魅力を持っているものである。そして、この日本においては過去の歴史の中、幾多の、剣の頂を極めんとした「剣豪」と呼ばれる者達がいたのは確かな一つの事実である。

 

 

さて、まず初めの前置きはここまでとして何が言いたいのか、と思われる読者の皆様もおられるかもしれない。その問いに対して、私はこう答えたい。前述の前置きは、この作品を読んでいくうえで重要となる事前知識なのであると。

 

 かつて一人の剣豪がいた。刀を握り六十と余年、幾多の強者達と剣士としての戦いを繰り広げ、屍を積み上げた上に生き残り。而して老いを自覚し、否応なく第一線を退き。水墨画に代替と言わんばかりに入れ込み。

 

 だが、彼は口惜しかった。泡沫の幻影だとしても、彼は手を伸ばしたかったのだ。見えた一筋の光、剣の頂というこの先で待っていた光に。

 

その願いは叶わぬ、筈だった。が、しかし。唐突に現れ脳内に語り掛けてきた謎の存在は彼に提案する。悪鬼羅刹、魑魅魍魎が幾多ひしめく自分の世界で暴れてくれぬかと。その願いに男は喜んで答え、今生での名前の記憶と引き換えに愛刀を携え、謎の存在の管理する世界の片隅、自殺したエルフの少年、ハーク(表紙左)へと転生する。

 

 そして、彼、もといここからはハークと呼ぼう。ハークが再び復活した世界は、魔獣や強者ひしめく正に剣豪にとっては理想郷と言っても過言ではない世界であった。だがしかし、この世界においては絶対的なものがあった。それは「レベル」。レベルの差が技量なんて全く関係なくさせる無情にも過ぎる世界だったのである。

 

(面白いな、この巷は)

 

無論そんなこと程度で足を止めるハークではなかった。例えそうだとしても、この世界は自分にとって理想郷。未熟だと言うのであれば成長すればよいだけ。その時間は、前世の何倍も存在する。

 

 そしてハークの前には、無数の強者が現れる。弱そうに見えて実際はレベル差により圧倒的に格上のチンピラ、生前のハークの縁者、女エルフのヴィラデルディーチェ、そして突如現れた最強の存在、ドラゴン。

 

無数の強者、対し自分は今は未だ弱者。だが、それだとしても負けるわけにはいかない。

 

時に、生前のハークの相棒であり自身が「虎丸」と名付けた魔獣と連携し。時に、前世で縁のあった剣豪、一刀両断の極みたる噴煙降る地で興った剣術の開祖の技を借り。

 

冴え渡る剣術と機転、連携で以て圧倒的不利を跳ね返し死線を潜り抜けていく。勝ち残り生き延びるため、手段をある程度選ばず生き抜いてく。そんな泥臭くも熱い、心を確かに焦がす戦いが目白押しのこの作品。

 

肩の力を抜きたい読者様、剣戟が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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