読書感想:春夏秋冬代行者 夏の舞 上

 

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読書感想:春夏秋冬代行者 春の舞 上&春夏秋冬代行者 春の舞 下 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、現人神であっても普通の人間、あくまでも代行者。少しだけ特別な力を持つだけの普通の人間であるし、恋だってする。というのは前巻を読まれた読者様であればもうお分かりであろう。前巻、雛菊を巡る騒動を何とか解決し、代行者達の結束は固まり、彼等の間で交わされる恋は更に矢印を強くした。しかし、前巻を読まれた読者様であれば新たなる火種は既に生まれていると言う事をご存じであろう。そう、それは「夏」の代行者とその護衛官である葉桜姉妹である。前巻、史上初の双子神として覚醒してしまった事で、今巻の大波乱は幕を開けるのだ。

 

 

「神」は一人でいい。二人は不要、同じ場所に二人は立てぬ。そう言わんばかりに動き出していくのは、代行者達の力を利用し、利益を得ようとする者達。「改革派」と「根絶派」、前巻で代行者達の活躍により一定の均衡は招けたものの、まだ彼等の思惑は消え去ってはいない。

 

 そんな奴等が葉桜姉妹に目を付けぬわけがなく。双子の神を排除せんとする者、利用せんとする者達の思惑が蠢き、姉妹はそれぞれ愛する者達と引き離されてしまう。

 

そこに絡むのは、日の入りと日の出を司る者達を襲う、実体のなき狼、「暗狼」と名付けられた謎の脅威。「春」の不在により巻き起こった天罰という説が派閥の対立を招き、暴力行為の目が徐々に芽生え始め。遂には雛菊の首のすげ替え、という事件が起こりかけ葉桜姉妹が行方をくらます。

 

―――ほら、■■■ほうが良かったじゃない。

 

こうすれば良かった、こうあってほしかった。何故こうならなかった。全て自分のせいだと悩む瑠璃。彼女の側に必死で仕えるも、その内面にどす黒い感情を燻らせるあやめ。

 

それぞれ姉妹の婚約者であり、婚約破棄と言う引き離される結果に納得できぬ二人の男、連理と雷鳥

 

「この際、全員で行くのはどうだろうか」

 

そして、未遂の事件から警戒し身を隠す狼星や雛菊、代行者達。

 

 それぞれの思惑、そして譲れぬ思い。全ての思いを交錯させながら、盤上に集った彼等はまるで導かれるかのように動き出す。全ての者達が集うのは南の果て、竜宮。日の動きを制御する儀式が行われる場所であり、代行者にとっても縁の深い地。そして今、「暗狼」の脅威に揺れる場所。

 

暗狼事件の裏、そこに垣間見えるのは誰かの心。離してはいけぬ筈の手を離したものの、「彼」へと向けた想い。

 

果たしてすべての因果、思いが集うその地で待つのはどんな最後か。どんな物語か。

 

下巻、期待していきたい次第である。

 

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