読書感想:保健室のオトナな先輩、俺の前ではすぐデレる

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 さて、保健室と言う単語にちょっとえっちな響きを感じられた読者様は年配であられるかもしれない、という仮定はおいておき、保健室とは秘密の空間である、と想起された読者様も、まぁツッコミはしないものとして。保健室、それはケガをしたり病気をしたりした時にいく場所である。苦手であるか、好きであるか。意見は分かれる所であろう。因みに私は、保健室のベッドは妙に硬かったような記憶がある。

 

 

という前置きとこのタイトルからお察しいただけているであろうが、この作品は保健室を舞台に展開していくラブコメである。もう砂糖を吐きそうな程のラブコメなのである。

 

保健室によくいる保健委員である高校二年生、柚月(表紙)。品行方正、成績優秀。生徒達からも頼りにされる事多々あり、告白される事も多々あり。

 

「見栄張ってると痛い目見ますよ」

 

 だがしかし、生来の体質故に保健室の常連である少年、恭二だけは知っていた。彼女は只、背伸びしているだけの子供であることを。そして何故か、いつも自分に絡んできては自爆していく可愛い一面があると言う事を。

 

そんな二人は、どこかよそよそしく、他人同士のように。しかし、ひょんな事から恭二が柚月に告白めいた一言を参考に投げた事から大きく動き出す。大人であるはずの彼女の心は大いに乱され、もう手加減はしないとばかりに宣戦布告する。

 

 何故そんなにも心かき乱されるのか。それは柚月の初恋の相手が恭二であるから。そして一度、失恋を経ているから。その失恋を切っ掛けに大人となる為に努力を重ねてきたからである。

 

が、しかし。背伸びしていても恋心は、照れは隠せない。間接キスを指摘されて自爆したり、添い寝してあげようかと提案してやり返されてテンぱったり。何とか連絡先を交換したと思えば、メッセージのやり取りでまた自爆したり。

 

 自爆重なる日々の中、どこかもどかしく、こそばゆく。お互いに何となく覚えている、あの日の事があと一歩を尻込みさせる。少し空回り気味なやり取りが続く中、恭二は「オトナ」であろうとする柚月の本心を知っていく。自分の目で見て、姉である葉月と出会って聞いて。その根底へと迫っていく。

 

諦めたくない、否定されたくない。子供として見られるからこそ意固地に。自分が傷つくとしても背伸びを続ける彼女に届けるならば、どんな言葉がいいだろうか。

 

「・・・・・・俺は、いいと思います。見栄張って、頑張ってる先輩も」

 

「先輩―――俺と、付き合ってください」

 

 それは信じる事、受け止める事を告げる言葉。引き留める訳ではなく信じる為。柚月の一人暮らしと言う平穏を守る為、恭二が提案する新たな関係。それは新しい関係を開く鍵。何とも言えない、まだ名前もない関係を始める鍵。

 

割れ鍋に綴じ蓋、二人を言い表すならばそんな言葉がふさわしいだろう。もどかしく、いじらしく、こそばゆく。某ソシャゲ風に言うならば、心の中の桃色髪の娘が尊死するかのよう。純粋に甘い、砂になる程に甘い。正直に言ってしまおう、私の心に致命傷を与えてくるラブコメも久しぶりであると。

 

そんな面白き、純粋なラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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