読書感想:クラスメイトの元アイドルが、とにかく挙動不審なんです。

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様の中でとりあえず高校生ではない方は、高校時代を思い返しつつ応えていただきたい。読者の皆様は、同じクラスにこんな存在がいてほしかった、という問いかけをされたらどんな答えを返されるであろうか。どんな存在がいたら嬉しかったと思われるであろうか。

 

 

その答えは千差万別、明確な答えなんかない。しかし、「元アイドル」が同じクラスにいるというこの作品のような状況は無いのかもしれない。

 

普通の公立高校に通う、ごく普通の高校一年生、卓也(表紙左)。貴重な青春時代をなるべく自分の為に使うべく、わざと学校から少し外れた場所にあるコンビニでバイトする以外は特にさしたる特徴もない。しかし彼のクラスにはとある、他にはない「特別」があった。

 

 それは国民的アイドルユニットの一員であった元アイドル、紫音(表紙右、及び表紙中央)が在籍していると言う事。普通であれば、接点なんて無いはずの二人。しかし、卓也には自分だけが知る「特別」があった。

 

それは、何故か紫音が変装した上で自分のバイト先に現れ買い物をしていくと言う事。明らかな挙動不審な様子でバレているとも知らず。しかし彼女はいつも、何故かやってくる。

 

更には何故か、席替えで隣同士になった事から紫音の挙動不審な様子は増えていく。卓也が友達と何気なくする会話に何故かこれでもかという程に反応し、更には卓也がカラオケに来ないと知っただけで膨れたり。

 

 ・・・画面の前の読者の皆様、もうお察しの読者様も多いであろう。つまりはそういう事である。席替えから始まり何気ない日々の中、紫音はもどかしくも必死に、卓也に対し不器用にアプローチをしていくのである。

 

アイドルのグッズを売る店で遭遇し、彼に限定グッズをプレゼントしたり。メッセージアプリの連絡先を交換しただけで舞い上がったり、彼がメイドに関する話題を話していたのを聞けばメイド服姿の自撮りを送りつけたり。

 

 何気なくもだもだと、けれど精一杯、満開の愛を乗せて、笑顔、恋、届きますようにと言うかのように。彼女から伝わる恋は、卓也の心を変えていく。その心に、確かな変化の風を吹き込ませていく。

 

「たっくんがわたしと釣り合ってないことなんてないよ!!」

 

いやしかし、けれど、自分は。そんな否定の気持ちも紫音は蹴っ飛ばし。遠足での班行動、更には疑似デートでのお互いへのあだ名呼びという進展、更には親友の恋路というイベントを経て。

 

「綺麗だね・・・・・・」

 

自分を誤魔化す事が出来なくなっていく、逃げていた思いから目を逸らせなくなっていく。だからこそ向き合う決心を。言い訳は終えて向き合う努力を。卓也の心に確かに目覚める、恋の音が。

 

 もどかしくこそばゆく、けれど瑞々しくて等身大、甘酸っぱくて温かい。糖度の高く質も良い、このラブコメ、正に悦い、一つの極上であると私は言いたい。

 

まるでまんがタイムきららのよう、そんなラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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