読書感想:断頭台の花嫁 世界を滅ぼすふつつかな竜姫ですが。

 

 さて、突然ではあるが、断頭台と言えばギロチン、中世のフランス辺りにおいて数多くの歴史上の人物を刃の錆へと変えてきた処刑方法であるが、断頭台の惨劇、というカードが存在している、という話もさておいて。画面の前の読者の皆様は、誰かを救う力がもし自分にしかないとしたらどうされるであろうか。まだ見ぬ誰かの為、その力を惜しげもなく使われることのできるタイプであろうか。

 

 

物語となる現代世界、この世界には「幻想少女」、と呼ばれる幻想上の生物の因子を発現させた少女達がいる。麒麟不定、竜、不死鳥、吸血鬼、人狼夢魔。それぞれ一人ずつがその因子を突如発現し、「悪魔」と呼ばれる魂のがん細胞にいつか乗っ取られる危険性を抱えている。そして通称「特災研」と「オーダー」と呼ばれる組織がその身柄と研究、隠匿を賭けて暗闘している、というのが基本的な説明である。

 

「私と、ケッコンしなさい」

 

とある高校の生徒会に所属し、副会長としてあらゆる業務をこなす究極の善人、太宰龍之介。生徒会長である蘭子に頼られ、後輩である真理にからかわれ。そんなある日、彼が出会ったのは処刑場に向かう途中で、輸送しているヘリを叩き落とす形で救われた少女、燐音(表紙)。彼女を追いやってきた、「吸血鬼」の幻想少女、真理との戦いの中に思わず飛び込み。深手を負った彼は燐音の提案により、彼女を救うために「結合魂魄術式」、通称ケッコンと呼ばれる契約を交わす事で。何故か自分に宿っていた「聖印」と呼ばれる伝説の力を元に、彼女と力を共有し、生き延びる事に成功する。

 

「―――好いていますから」

 

特災研の全権代理であった事が判明した蘭子から基本的なレクチャーを受け、狭いアパートで始まるのは愛し合う為の二人暮らし。世間知らずだからこそグイグイ来る燐音にきりきり舞いさせられ、更には学校に転校してきた燐音と真理が馬の合わなさから激突するのを仲裁し。新たな色を加え、彼の日常は大きく色づいていく。

 

だが、事態はそう平穏にはいかなかった。ひょんな事から燐音の中に生まれた一つの不安。そして彼等の身近に潜んでいた第三の勢力の魔の手が牙を剥き。龍之介と燐音が引き離され、「聖印」を模倣した術式により強制的に燐音が暴走させられてしまう。

 

「救います」

 

だが、それでも彼女は今、困っている。ならば助ける、只一択。真理ともケッコンを交わし龍之介は駆けつけ。真理が作り出した一瞬の隙を突き、あり得ぬ程の再生能力を発現させながら。彼女を救わんと必死に手を伸ばし、新たなケッコンの術式を結び直すのである。

 

王道的なファンタジーであり、様々な要素がワクワクと面白さに繋がっているこの作品。心からワクワクしたい読者様、王道のファンタジーが好きと言う読者様は是非に。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

断頭台の花嫁 世界を滅ぼすふつつかな竜姫ですが。 (ファンタジア文庫) | 紫 大悟, かやはら |本 | 通販 | Amazon