さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は、「アイザック・ニュートン」という偉人についてどれだけの事をご存じであろうか。普通の人からすれば、「万有引力」という単語に紐づけて覚えておいででおられるかもしれない。しかし、実はニュートンなる人物は、意外と様々な天才としての顔を持っている。自然哲学者、天文学者、物理学者、数学者、神学者。簡単に列挙するだけでもこれだけの顔があり、その顔の数だけ様々な事を発見している天才と言っても過言ではない偉人なのである。
そんな彼の偉業と天才と紙一重の変人ぶりは各自調べていただくとして、彼の顔の一つとして「造幣局長」という顔があったのをご存じの読者様はどれだけおられるだろうか。つまりは、かつての英国でお金に関する仕事をしていたと言えば伝わるであろうか。
そういう様々な顔を持つ彼は、世界の真理をもっと追いたかったと言う悔いを抱え、異世界へと転生していた。半魔族なエルフ、アイシア(表紙右)として異世界に転生し、しかし今までの苦労の反動か、それとも変人ぶりがぶっ飛んだのか。彼、もとい彼女は育ての親であるリリステラに甘やかされる事を至上の喜びとする、残念美少女になっていたのである。
しかし、ある日彼女は衝撃の事実を知る。それはリリステラに縁談の話が舞い込んでいると言う事を。相手は幼馴染でもある、貧乏領主の家の長男、ダリオス(表紙左)。いわば政略結婚である。
「もう一度、造幣局長をやらせてもらおうか」
既に決定は覆らぬ、しかしママを例え幼馴染でも渡したくない。ならば何をすべきか? ―――答えは一つ。この貧乏な領地を経済大国にしてしまいましょう。
「そんなに面白い取引なのか? これが?」
「分かる人にはね。飛びつきたくなっちゃうくらい、面白いやつなのさ」
ダリウスをお供と言う名の後見人に、もとい利用対象として彼女が売りさばくのは「信用」という商品。現物をひけらかさず、まるで誘蛾灯に誘われる虫を相手取るかのように商人たちを手玉に取り。意図的にバブルを引き起こし、その隙を突き世の中の価値観を覆すような種をまき、徐々に浸透させたところでそこから成果を引き出して見せる。
嘘をつかぬ為に、今だけは嘘つきに。何処か詐欺の匂いすら漂わせる、しかし確かな経済観に裏打ちされた政策の数々。正に「造幣局長」の面目躍如と言わんばかりに大量の糧を獲得し。商売を邪魔する貴族達との戦いも、ハッタリと策略で時に死線を渡りながら潜り抜けていく。
正しく世界が彼女の掌中で踊るかのように。そんな一種独特の経済的な面白さがあるこの作品。
作者様のファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
美少女エルフ(大嘘)が救う! 弱小領地 ~万有引力だけだと思った? 前世の知識で経済無双~ (電撃文庫) | 長田 信織, にゅむ |本 | 通販 | Amazon