読書感想:公務員、中田忍の悪徳3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:公務員、中田忍の悪徳2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

(※注:今巻の感想は今までで一番ネタバレの要素を含んでおりますので、未読勢の読者の皆様は、ネタバレを気にしないと言う読者様以外は、是非ブラウザバックして読了してから来てくださいませ)

 

 

さて、前巻の最後、何処か嫌な予感のする不思議な文様が現れたと言うのは、前巻を読まれた読者様はご存じであろう。 その文様が意味するところは何か。そこに焦点を当て、一つのプロローグの終わりとなるのが今巻である。

 

年の瀬も迫る中、少しだけでもアリエルを外に出せないかと言う事を共犯者たちの言葉により考え始める忍。しかし無垢なる存在にとって、世界を見せると言う事はどうなるか分からず。一先ず結論を留保する中、彼にとって不測の事態が巻き起こる。

 

 それは街の各地に出現した、様々なもので書かれた謎の文様。はっきりと描かれたものは、アリエルが書いたものと不思議と類似していて。二人目の異世界エルフの予感を感じさせる中、忍は一つの決断を下す。

 

「俺は、二人目の異世界エルフを保護するつもりはない」

 

その決断とは、例え新しい異世界エルフが現れても見逃すと言う事。アリエルだけで手いっぱいだからこそ、彼女だけでも確実に守る。その決意の矢先、市長の鶴の一声で区役所職員として夜の見回りに参加することになり。やる気のない部下達を帰し、都合よく一人となった忍は捜索を本格的に開始する。

 

 手掛かりとなるのは、文様の出現地点を結んでできる五芒星。その手掛かりを元に捜査する忍の前、遂に事態の元凶が現れる。しかしそれは異世界エルフ、ではなかった。その名は環(表紙右)。名前が表す通り、異世界とは全く関係のない日本人の少女である。

 

自身の恵まれた容姿から疎まれ危害を加えられ、人を信用できず。だからこそエルフに憧れる彼女。そんな彼女と対等の立場として話し合い。忍は衝撃の事実を知らされる。

 

それは自分が調べなかっただけで、この世界、自分の身近の過去の歴史にエルフらしい痕跡があったという事。エルフが確かに側にいたかもしれぬという事。

 

その事実を知り、それでもアリエルを守る為に環を引き離そうとする忍。しかし、庇護しようとするアリエルは忍と対等である事を望み、彼の事を励まそうとする。

 

「俺は君を、脅迫しに来た」

 

 その励ましを受け、忍は自身の選択を再び為す。常識では測れぬ、彼だけの不器用な選択を。正直者だからこその選択を。

 

新たに環を仲間に加え、始まるのは穏やかな日々か。否、私も前述した通り今巻までがプロローグ。故に特大の不穏が待っている。

 

鳴る筈のないインターホンが鳴り、届けられるのは衝撃のブツ。果たして水面下で何が起きているのか。

 

ここから先も楽しみである。

 

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