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読書感想:時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、この巻の感想を書いていく前に、改めてもう一度、話しておきたいことがある。・・・祝、このラノ2022総合新作部門五位、文庫部門九位受賞。そう、画面の前の読者の皆様も約半月前のあの衝撃は未だ覚えておいでではないであろうか。新作でありながら、文庫部門のトップ10にランクインしたと言うのは、快挙である。それ即ち、この作品に込められた面白さが多くの読者様に認められたと言う事であり、喜ばしい事である。では、そんな流れからの今巻では一体、どんな展開を見せてくるのであろうか。
アーリャと二人、密談みたいに勉強会に励む中、有希や綾乃、マーシャが押しかけ賑やかとなり。偶々見つけた催眠術の本が大騒動を招いたり。
初めてデートする事になり、緊張しながらも初々しい様子を見せ、何だかんだと最後はいつも通り気安くなって、いつもの空気が流れたり。
一学期も終わりに近づき、夏休みも近づく中繰り広げられるほのぼのとした時間。コメディな時間が流れる中、しかし油断してはいけない。有希はいつでも、その牙を研ぎ機会を狙っている。
三者面談、政近を取り巻く家の因縁の闇の深さがそれとなく明かされ、期末試験、アーリャの傍に立つに相応しい自分となる為に、政近が柄にもなく勉強に励んだり。
そんな中、無理がたたったのか、体調を崩してしまう政近。有希に唆され、政近のお見舞いに行くアーリャ。
ここで皆様、思い返してみてほしい。あの有希は、そんな生暖かい事を何の思惑もなくするであろうか? 答えは否。そこにこそ有希の思惑が潜んでいる。
アーリャに買っていかせる薬を指定し政近を行動不能にし。二人を引き離した上で、終業式の役員挨拶の前哨戦と言わんばかりに仕掛け、一人きりのアーリャを追い込んでいく。
事態を招いたのは政近の油断か、それともアーリャの色々な意味での実直さか。一撃仕掛けられ、枷を嵌められたこの状況からの逆転の一手は何処にあるのか。
「どうしたいかって・・・・・・それは、谷山さんを助けたいわよ」
その鍵の一つは、アーリャの実直さ。かつて自分を追い込んで自爆した相手をも助けたいと願う優しさ。
「引き分け狙いはもうやめだ。向こうから仕掛けてきた以上・・・・・・容赦なく潰す」
その優しさを弾丸に、撃ちだすのは政近の策略。容赦も迷いも捨てた、一切の妥協なき一種悪辣ですらある逆転への作戦。
「ラブ」があるから「コメ」が光り、〆る要素がきちんと成り立っているからこそ、この「ラブ」は際立つ。三巻にしてこの面白さは更なる円熟を迎え、安定した面白さへと煮詰められていく。
【嘘だけど】
勿論、ロシア語でのデレも健在である。更に範囲を絞り、ここぞと言う時に繰り出されるそのデレ。そこに、更に心を撃ち抜かれる事請け合いである。
シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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