読書感想:モブから始まる探索英雄譚3

f:id:yuukimasiro:20211128132958j:plain

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:モブから始まる探索英雄譚2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 問:ダンジョン探索もの、もしくはバトルの伴うファンタジー系作品の中で、主に主人公の周りに存在しないものは何か。 ・・・その答えは各自の心の中に答えがあると思われるので普遍的な正解は存在しないのかもしれないが、答えの一つとして「継続的な安寧」という要素が挙げられるのではないだろうか。それもまた仕方のない事なのかもしれない。それぞれ理由があるのかもしれないが、基本的に主人公と言うのは自分から戦いに向かっていくものと言ってもいいかもしれぬから。

 

 

しかし、主人公と言う人種は往々にして、自分から戦いや厄介事を引き寄せてしまうものである。それはやはり、この作品の主人公である海斗もまた同じであり。やはり厄介事の神様に愛されているのか。スタンピードという絶体絶命の危機を乗り越え生き延びた彼の元へ、新たなる強敵は姿を現す。

 

 一体、スタンピードを乗り越えた彼に迫る脅威とは何か。それは神話上の生物、オルトロス。そしてそれを使役する士爵級悪魔である。

 

例え悪魔としては最下級であっても、それでも人間にとっては絶対の壁の向こうに存在する絶望的な強敵。必死に抗うも容易く返され、あっけなくパーティ壊滅の危機に陥り。

 

 その危機を乗り越える力となるのは、海翔との絆が生み出したスキルで本来の力を解放したルシェ。しかし、戦いを乗り越え海翔の心の中に宿るのは護りたいという渇望。

 

それもまた、当然であろう。彼の夢、ヒーローになる事。しかし今はどうか。あっけなくパーティを壊滅の危機に晒し、サーバントの力という裏技で乗り越えただけ。

 

だからこそ、守りたいと願う海斗は、更なる特訓に励む。士爵級悪魔を倒し手に入れた三枚目のカードで呼び出した悪魔剣士、ベルリアを相手に剣術の稽古に励み。様々な事を試行錯誤しながら、自分だけに出来る事を探していく。

 

「俺、やめてくれる様に頼みましたよね。どうしますか? まだやりますか?」

 

そんな彼は未だ未熟、しかし確かに世界は彼へと注目していく。探索者達は彼に「黒い彗星」という異名を付け。想い人である春香がナンパな男達の危機に晒された時、彼の成長は小さいけれど大きな芽を出す。ダンジョン仕込みの本気の力が、春香を守る力になる。

 

 何も変わらないように見えて、牛歩に見えて。それでも確かに何かが変わり出す。春香との距離感も、確かに変わっていく。そんな彼の、人間的な成長が本当の意味で始まる今巻。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

モブから始まる探索英雄譚 3 (HJ文庫) | 海翔, あるみっく |本 | 通販 | Amazon