さて、例えば仮面ライダーやウルトラマンは基本的に、その正体は秘密な訳であるが、その方が神秘性がある、と思われる読者の方はおられるであろうか。正体バレ、というのも一つの面白い展開であるが。分からない、謎、と言う方が面白いと言えるかもしれない。
ではこの作品においてはどうなのか、と言う事であるが。女神が人々に「ダンジョン」という試練を与え、スキルと言う力に目覚めた者達が戦う世界で。主人公である高校生、日向(表紙下)は高校生になってもスキルが芽生えず。永遠のレベル0として、周囲から蔑まれ苛められていた。
しかしある日、レベルを判断する水晶が黒色に染まった途端、いきなりダンジョンの中に引き込まれ。いきなり頭の中に声が響いたかと思えば、困難によりその状況に応じたスキルが突然に付与され。訳も分からぬままにダンジョンを探索する中、恐竜のような強力な魔物に遭遇し。命がけで、咄嗟の機転も生かしてその魔物を攻略し、魔石を手に入れることに成功する。
「俺もいつか探索ランキングに載れたらいいなぁ」
しかし、その戦果が全ての探索者を集めたランキングのトップに彼を立たせる事となり。だがそもそも、名前すら登録していない為に名前すら表示されず、日向もまたその事実に気付かず。そのまま彼は、単独でダンジョン探索を続ける中。彼は常人より強いスキルを持ち、しかしそれが日常生活に影響を及ぼしてしまうが故に、孤独に苛まれる二人の少女と出会う。
あらゆるものを凍らせてしまうスキルを持つひなた(表紙左)。周囲の音を全て拾ってしまうが故に周囲を遠ざける詩乃(表紙右)。日向に宿った謎の力は、二人のスキルにも対応し、彼女達を受け入れる為のスキルを生み出し。結果として、二人の傍に居られるのは彼だけで。それぞれの家の家族達にも認められていく中、彼もまた知らぬうちにレベルアップをし、少しずつ彼女達により前向きとなっていく。
「何もかもを一人で抱えないでほしい」
「君が辛いこと、私達にも一緒に背負わせてほしい」
運命を受け入れ目覚めた、周囲を圧倒する「愚者」としての謎の力。その力に溺れんとしようとする中、詩乃とひなたの二人に止められた事で。やっと自分を受け入れてくれる場所を得た日向は、正しい方向性で力を使う。周囲を圧倒する無双の力ではなく、周囲を護るための、まるで仮面のヒーローのような力を。
一つの目覚めが好転を招く、さっくり読める無双ものの面白さがあるこの作品。ダンジョンものが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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