読書感想:放課後の迷宮冒険者 ~日本と異世界を行き来できるようになった僕はレベルアップに勤しみます~

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 さて、異世界転移というものは昨今のファンタジーにおいて王道とも言っていいものである。では、なぜ人は転移するのであろうか。大体の場合においては、魔王討伐のような目的が存在する、と言ってもいい。だが、果たして目的が無ければ異世界へ転移してはいけないのであろうか。確固たる目的が無ければ、その異世界転移は果たしてどういう意味を持つのであろうか。

 

 

さて感想を書いていく前に先に謝罪させていただくが、先日上げた紹介予定の作品のリストの中に何故この作品が無かったのか、というと入れるのを忘れてしまったからである、申し訳ございません。

 

この作品の舞台である異世界、ド・メルタ。迷宮が存在し魔物が存在し、更には成果によってランクが付けられる冒険者達が存在するこの異世界。その異世界の片隅、単独で迷宮に潜り只管レベルアップに励む少年がいた。彼の名前は晶(表紙左)。その恰好からお察しかもしれないが、日本からの転移者である。

 

 しかし、彼は別に何かしらの指名を背負っている訳もない。それどころか別に片道切符でこの異世界に来ている訳ではない。ひょんな事からこの異世界の神様の所についてしまい、この異世界と現実世界を行き来する権利を得ただけなのである。

 

日本からの物も持ち込み自由、しかし死んだらそれまで。だからこそ彼は只管にレベルアップに励み。しかしランクに興味が無いからこそランクは最下位クラス、けれどレベルは既にこの世界に於いての最強クラス。

 

「・・・・・・僕は迷宮に来るのが楽しみなんだ。そんなところで後味悪いことは極力ごめんなの。ほとんど自分のためだから気にしないで」

 

人間とも魔物ともつかぬ「師匠」から魔法の手ほどきを受け、しかし根のビビりは変わらず人を殺す気概もなく。だが人が傷つくのは見たくない。だからこそ時に、無理をしてでも人を助ける。

 

 あくまで道楽のついで、そんなお気楽の探索の日々の中。晶は「一人歩きの小人」という異名と共に徐々に知られ、彼の周りに様々な人間関係が出来ていく。

 

懇意にしている受付嬢、アシュレイにたかられたり。迷宮で助け奴隷から解放した少女、スクレール(表紙右)から懐かれて。

 

ある時は日本の調味料を持ち込んで味の革命を巻き起こしたり。またある時は、異世界ポーションを作って気が付かぬ間に誰かを助けたり。オリジナルの魔法を作って大暴れしたり。

 

そんな、何気ない日常がどこか緩く穏やかな空気の中で繰り広げられるこの作品。だからこそ、この作品は何も考えず、肩の力を抜いて読むのがきっと正しい楽しみ方の筈である。

 

肩の力を抜いて、リラックスしたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

放課後の迷宮冒険者~日本と異世界を行き来できるようになった僕はレベルアップに勤しみます (GCN文庫) | 樋辻臥命, かれい |本 | 通販 | Amazon