読書感想:転生魔王の大誤算4 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート~

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前巻感想はこちら↓

読書感想:転生魔王の大誤算3 ~有能魔王軍の世界征服最短ルート~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、このシリーズを読まれている読者様であれば人間側の上層部の腐敗ぶりと言うのはもう大体お分かりであろう。まともな上層部なんて何処にいるのだろう、寧ろケンゴ―に纏めて支配された方が良いのではないか、という事を思われた読者様もおられるのではないだろうか。そんな人間側とは反比例するかのように、まるで家族のような絆で繋がり強固な関係性を築きつつあるケンゴ―達。が、しかし。ケンゴ―の事を真の意味で理解している者はまだ、全員でないのが実情ではないだろうか。

 

 

現在のその筆頭は何といっても、サタンことサ藤ではないだろうか。ケンゴ―を狂信、はたまた妄信し彼に可愛がられる弟分。そんな彼の大幅な成長が描かれるのが今巻である。

 

花見をすればルシ子と極バトル、シト音に弱音を吐いてみればルシ子の暴走を招き。相も変わらずドタバタな日々の中、ケンゴ―により提案された平原地帯の三か国の同時攻略作戦。更には提案の可決により決まった、魔将三名による国攻略RTA勝負。

 

 これだけ見れば簡単であっただろう。だが、ケンゴ―が良かれと思いつけた縛りが混沌を巻き起こす。それは「なるべく人を傷つけず、血を流さず」という条件。サ藤にとっては不利にも程がある条件の中、最大の国を攻略する事になってしまうサ藤。

 

キレて蹂躙すれば楽、だがしかしキレてはいけない。人間を懐柔し、取り込む事。怒りを何とか抑えながらも作戦に臨む中、サ藤は攻略対象の国の姫、リモーネとひょんな事から邂逅を果たす。

 

 彼女こそが、サ藤を成長させる鍵。そして、彼を変えていく鍵である。

 

滅ぼすべき対象、ただそれだけである唾棄すべき人間。しかし彼女だけは何か違う。勘違いと言えど自分を振り回してくるし、自分に対等に意見してくる。

 

「たとえ勝負に負けても、よくがんばったと褒めてくださるのではなくて?」

 

どころか、彼女には人間だからこそ見えているものがある。その見識から来る言葉が、彼に否定の言葉を出させない。反論のできないその言葉が、凝り固まった考え方と価値観を解いていく。

 

いつの間にか手に入れていた得難きもの。それこそがもっとも大切なもの、守るべきもの。だからこそサ藤は復讐の老勇者に果敢に挑む、絶対に傷つけられず負けられぬ戦いへ。

 

戦いの中、実感するケンゴ―の偉大さ。目の前に迫るは自身の命を刈り取らんとする敵。それでも、背後の者だけは守りたい。

 

「見事なり、サ藤! おまえの底力、しかと余は見届けたぞ!」

 

その覚悟に応えぬケンゴ―であるわけがない。まるで落雷が如く現れた彼は、怒りのままに、そして覚悟の元にその力を解き放ち全てを終わらせる。

 

更なる魔王軍の魅力と、成長の輝きが見所である今巻。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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