読書感想:他人を寄せつけない無愛想な女子に説教したら、めちゃくちゃ懐かれた2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:他人を寄せつけない無愛想な女子に説教したら、めちゃくちゃ懐かれた - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の感想で私はこの作品を「青春」の物語である、と語ったかと思う。痛くて苦くてえぐくて。そんな淡々とした荒涼とした景色の広がる作品なのであると語ったかと思う。それは今巻においても変わらない。揺れ惑う等身大の感情はそのままに、いっそ淡々と進んでいくのがこの作品の持ち味なのである。

 

 

直哉と梨沙、優等生と問題児。二人は勿論、恋人同士でもなければ別に仲の良い友人、と言うのも中途半端な関係である。そんな二人を包む景色は時を止めず進み、季節は歩むことを止めず。聖夜や初詣といったイベント満載の冬休みへと、作中の景色は進んでいく事となる。

 

普通のラブコメであれば、聖夜に初詣なんて言うのは一大イベントであり、悲喜こもごも、様々な感情が交差するイベントが目白押し、となるであろう。しかしこの作品は「青春」である。普通のラブコメではない。二人が挑むのは予備校での講習なんて言う色気の欠片もないイベントである。

 

しかし、そんなイベントの中、色気の欠片もない灰色な日々の中、直哉と梨沙は向かい合う。不器用にも日々を重ね、別に友達という訳でもないけど同じ時間を過ごす事が多くなっていく。

 

その中、直哉は少しずつ、梨沙の根底にある家庭の闇、そこにあるものに触れていく事になる。

 

クリスマスをどこか忌み嫌うのは何故か。

 

何故、誰にも頼ろうとしないのか。何故、将来の夢についてはぐらかすのか。

 

初詣の日、体調不良で倒れた彼女を家まで送り看病し。その一件の中、目撃した彼女の家の闇。固く閉ざされた扉の奥、垣間見えたのは捨てきれない親の影。どれだけ壊れていようとも、拭いきれぬこびりつく闇。

 

闇に囚われる彼女を見て、一体自分に何が出来るのか。何もない無力な自分に一体何が出来るのか。自問自答する中、父親の不器用な言葉の激励に背を押され。

 

「頼ってほしいんだ」

 

「俺を、信じてほしい」

 

 その先、母親の死んだ場所で語るは見つけた自分の気持ち。もう既に見過ごせない存在となっているからこそ、頼ってほしいと言う思い。そんなエゴにも近い思いかもしれない思いの吐露に、梨沙も今まで誰にも言えなかった思いを吐露する。

 

季節が巡る中、何も変わらぬ。ように見えて、実は少しずつ何かが変わっていく。

 

何処までも丁寧に、もどかしくも一歩ずつ。そんな等身大の心の距離の変化が、何処か温かくて優しい今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。