読書感想:エロゲ転生 運命に抗う金豚貴族の奮闘記1

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 さて、エロゲというと今、何やら業界の不振という話題が時折聞こえてくるような気がするが本当なのだろうか。少し前になるが、Loseというブランドが解散したそうと聞いた気がするが。それはさておき、画面の前の読者の皆様の中で十八歳以上の読者様、その中でもエロゲをプレイしたことのある読者様にとって、エロゲとはどんなところが魅力的なものであろうか? さっくりと日々のオカズに使える所であろうか?

 

 

そこは人それぞれ、エロゲの魅力と言うものを感じる所は皆違って皆いい。しかし、エロゲというものは時に奥深い世界観を持っている作品もある。作り込まれた世界観とストーリーの中にエロスを織り込む事で、魅せて面白さを引き出すと言う手法がある事も確かであろう。

 

なぜこんな事を予め述べているのかというと、この作品で描かれる世界はそういう世界だからである。

 

48人のシナリオライター、48人のイラストレーター。圧倒的な人員をつぎ込み作られた大作エロゲ、「運命48」。数々のヒロインがそれぞれの輝きで人気を博する中、ヒロインではないけれど一人だけ、圧倒的に嫌われ、まるでこの世界の厄を一手に押し付けられるかのように、どのヒロインのルートでも必ず死を迎えてしまう非業の人物がいた。

 

 その名はレオルド(表紙中央)。「金豚」との蔑称で呼ばれる嫌われキャラ、その精神としてこの作品の主人公である真人は転生してしまったのである。

 

どう足掻いても死、しかも自分としての自我が芽生えたのは、死への契機となる決闘の敗北の後。どう考えても詰み、一体自分が何をしたと言いたくなるかもしれぬ八方塞がり、危機的な状況からのスタート。

 

 レオルドのままであれば、決してこの状況は乗り切れなかっただろう。だが今、彼の精神は真人というこのゲームをやり込んだプレーヤーのもの。だからこそ、生き延びるために。幽閉された地において、レオルドは真摯に変わろうとし、最強の師匠たちからその技を学び、盗み取ろうと努力を始める。

 

決して最強ではない、知識があっても身にはならず、自分の周りは格上の強者ばかり。何度地に叩き伏せられたか、何度血反吐を吐きそうになったか。それでも、必死に努力を重ね、一歩ずつ。生き延びるために。

 

彼の行動は、非業の死を遂げる筈のサブヒロイン、第四王女のシルヴィア(表紙左)から注目され、間者としてメイドのイザベル(表紙右)を送り込まれ。そうとも知らず、只ひたすらに一歩ずつ。

 

「我が双肩には多くの想いがある。我が背中には多くの願いを託された。ならば、この想い、この願い! 俺が叶えてみせようぞ!!!」

 

 その努力は彼を裏切らず、流した想いは彼の背を押し。モンスター達の大氾濫の中、確かな一つの成果として結実する。それは、豚が見せた獅子の片鱗。死を乗り越えた証の第一歩。

 

だが、死を免れたという事は誰も知らぬ歴史が始まるという事。故に、まだこれから、ここから。

 

骨太のファンタジーが読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

エロゲ転生 運命に抗う金豚貴族の奮闘記 1 (オーバーラップ文庫) | 名無しの権兵衛, 星夕 |本 | 通販 | Amazon