読書感想:バレットコード:ファイアウォール

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。昨今、様々な仮想現実、いわゆるVRな世界が生まれ始め、仮想現実という新たな世界が徐々に世界に浸透しつつあることはもう皆さまご存じであろう。では、いつの日か某SAOのようなフルダイブ型の世界が出来たとして、貴方はそんな世界へ潜ってみたいだろうか。

 

「プロジェクト・ファイアウォール」。それは近未来、VRが現実に浸透した世界で青少年に課された、「VRによる戦争体験学習」。戦争の悲劇を防ぐため、予め戦争を体験することでその悲惨さを身に刻んでもらおうとするプロジェクト、の筈だった。

 

 だがしかし、かつてお台場で一人のハッカーにより引き起こされたテロにより両親を失った少年、優馬(表紙右)達が経験するはずだった、かの有名なノルマンディー上陸作戦は何故かお台場で幕を開ける。

 

そして、彼等に取って安全だったはずの体験学習は、途端にデスゲームへと様変わりする。何故ならば、「ファウント」と名付けられた謎の怪物達の出現により、彼等はゲーム内での死を現実世界での死に様変わりさせられてしまったからである。

 

幼馴染達と戦いに巻き込まれ、飛び込んだ鉄火場。優馬は世界四位の成績を持つ兵士、千歳(表紙左)の舞台に拾われ、共に戦いの中へと飛び込んでいく。

 

だが、彼女と共に戦えど、死は誰にでも平等で、唐突に訪れて。そんな中、千歳と優馬は心通わせ、惹かれ合っていく。

 

「私、あなたとお会い出来る時を、ずっと、心待ちにしていました」

 

必死で求められる「隊長」の顔を演じ、「隊」を優先する千歳にとって、例えどんな時だって「仲間」を優先する優馬は憧れで。

 

「千歳のこと、置いて行くわけない。絶対、何があっても助けに行く」

 

自分の命を最も軽く扱い戦場に飛び込む優馬を守りたいと願う千歳。だけど、それは優馬も同じ。失い続ける中で只一つ残った彼女を守りたいと願って。

 

 そして優馬は戦いの中、このプロジェクトの真実に触れる。大人達が遥か昔から繰り広げていた敵生体との戦い、その中に知らぬ間に巻き込まれていたという事を。

 

だが、絶望的な戦場の中にも残っていた、大切なものが。失うばかりで全て無くなっていくばかりだと思っていた彼の手の中にも、まだ守るべきものが残っていた。

 

「くたばる前に、覚えてけ。それがお前を倒す・・・・・・俺の仲間の数だっ!」

 

 そして、この人の為に生きて死にたいと言う者がいる。だからこそ彼は戦いに挑む、醜悪にして鮮烈なる英雄の力を纏って。

 

 

現実的が過ぎるまでに血みどろの戦場で、熱く切ない思いが駆け巡るこの作品。

 

重い読み応えを楽しみたい読者様、戦場の空気が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

バレットコード:ファイアウォール (電撃文庫) | 斉藤 すず, 緜 |本 | 通販 | Amazon