読書感想:僕の愛したジークフリーデ 第2部 失われし王女の物語

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前巻感想はこちら↓

読書感想:僕の愛したジークフリーデ 第1部 光なき騎士の物語 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、愛とは転じて憎悪となるものであり、愛が深ければ深い程、その愛が転じて生じる憎しみは深くなるものである。というのは前巻を読まれた読者様であればお分かりいただけているのではないだろうか。 ではそんな前巻、ジークフリーデの両腕が失われると言うとんでもないラストから今巻はどう展開するのだろうか。

 

 

前巻の衝撃的なラストから教会へと戻り、意識を取り戻さぬまま時折陛下の名前をつぶやきながら眠り続けるジークフリーデ。彼女の介護に励むオットーが心を揺らす中、師匠が遺した「大魔術典」が秘匿されていた魔術を教え、その魔術により見事ジークフリーデは蘇生する。

 

「君って本当に弱音を吐かないね」

 

両腕を無くしているが故にスプーンも握れぬ、それでも自身に出来る稽古を絶やさぬジークフリーデの世話をするオットー。

 

「お前は先輩と言う人を、何も分かっていない」

 

そんな彼女へと投げかけられるイザベラの言葉。お前は何も知らないという、まるで断ち切るかのような指摘。

 

「騎士だからだ」

 

 そう、何も分かってはいなかった。自身が作った義手でリハビリを始めた途端、傷口が開く程に稽古に励む彼女の心を支えるもの。彼女が縋るもの、その重さに。

 

「捧げるに値する人物に、捧げられたのだ、と。それを私は誇りに思う」

 

苛立ちをぶつけてしまいすれ違い、しかしひょんな事からお互いの過去の記憶を覗き見て仲直りし相互理解し。本当の意味でお互いの事を分かった二人。

 

 そんな二人の前、聞き覚えのある忌まわしき鐘の音が鳴り響き再びの「鮮血の謝肉祭」の始まりを告げる。あの日何も出来なかった忌まわしき記憶。だが、今度は一人ではいかせない。共に戦う力がある。ジークフリーデの剣術とオットーの魔術を融合させた二心同体の戦い方で、今度こそ王女を止めるために乗り込んでいく二人。

 

しかし、オットーがジークフリーデの事を知らなかったように。ジークフリーデもまた知らなかったことがある。それはロザリンデ王女の事。暴虐の限りを尽くす王女が秘めていた本心。

 

 師匠との戦いの先、謎の少女であったラーラが明かした真実。何故ロザリンデが彼女の目を盲目にしたのか、彼女とは一体誰なのか。オットーの師匠も真実に絡むその真実は、あまりにも重く切ないものであったのだ。

 

「消えるとしよう」

 

そこにあったのは確かに憎しみであったのかもしれない。しかし、憎しみに心を押し潰され塗り替えられていく中、確かに残っていた愛があった。いつか終わらせてほしい、という切なる願いがあった。

 

「私とて、おまえがいなくなるのは寂しいのだ」

 

その願いは確かに果たされ、闇は晴れ。彼女のいない世界をジークフリーデとオットーは進んでいく。何処までも広がる未来へ、今度は二人で。

 

愛憎の絡み合うドロドロとした中に、儚くも美しい白百合が如き愛情が確かに光っている今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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