読書感想:スパイ教室06 《百鬼》のジビア

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前巻感想はこちら↓

読書感想:スパイ教室05 《愚人》のエルナ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さてさて、早速ではあるが画面の前の読者の皆様、前巻を読まれたと言う前提の元でこの巻の感想を書いていく次第であるが、前巻の最後、衝撃的な展開の傷跡はもう薄れられた頃であろうか。それとも、未だ忘れられていないだろうか。我々は忘れてはいけぬ、この作品の世界はスパイの世界であり、命は簡単に失われてしまうという事を。

 

 

 壊滅してしまった、「灯」の同僚チーム、「鳳」。一人を残し壊滅してしまった最強のチーム。何故彼等は壊滅してしまったのか、一体彼等に何が起きてしまったのか。彼等に起きた事態の真相を求め、潜入したのは同盟国である工業国、フェンド連邦。霧に煙る紅茶と王室の国。

 

 だが、その国で待っていたのは決して歓待などではなかった。「灯」の前に現れたのは、連邦の諜報機関、「ベリアス」。かの組織のボスであるアメリは語る。この国において今、皇太子暗殺未遂事件が発生した。そしてその第一容疑者は、「鳳」の唯一の生き残り、ランであると。

 

ランの事を信じたい、だが確証があるわけでもない。そしてスパイの世界に友好関係なんてものはない。当然である。スパイにとって一番重要な事は祖国の利益。仲良しこよしなんかでやっていけるわけはない。あるのは利用、ただそれだけ。

 

ティアを人質に取られ、タイムリミットは二十四時間。ランを見つけ出さなければ、ティアには死あるのみ。

 

 捜査に奔走する「灯」。彼等を嘲笑うかのように起こってしまう暗殺事件。その中で巡るのは、霧の中に隠されている真実と黒幕の思惑。

 

誰が殺したクックロビン、誰が一体、「鳳」を壊滅させた。何故彼等は死ななければならなかった。そこに隠されている真実とは何か。

 

「蹂躙を始めよう。たまには狩られる側の絶望を知るといい」

 

壊滅の真実、それはあまりにも残酷なもの。決して彼等が死ぬ必要などはなかったという、悪辣な事実を示すもの。

 

だからこそ、許せない。許すつもりもない。「鳳」に学んだ技術を胸に、最初で最後の共同作戦と銘打って。「灯」達は牙を剥く。「鳳」を壊滅させた相手へと、これ以上ない程の完璧な形で、全てを闇の中に葬るかのように。

 

 だが。その裏で確かに「蛇」の思惑は渦巻いている。そしてそれは、ほどなくして炸裂の時を迎える。それこそ、最悪の形で。全てを裏切るかのように。

 

嘘だと言ってよ、―――。そう言いたくとももう届かない、既に紅蓮の中に策は為ってしまったのだから。

 

ここは地獄の一丁目、それすらも勘違いだったのかもしれない今巻。

 

更なる地獄は、ここから始まる、のかもしれない。

 

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