読書感想:外れスキルの追放王子、不思議なダンジョンで無限成長2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:外れスキルの追放王子、不思議なダンジョンで無限成長 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、私は前巻の感想でこの作品の展開には無理が無い、という事を語ったと思う。それこそが面白い訳であるこの作品、だが無理が無い展開だからこそ出来ない事もある。という事は画面の前の読者の皆様も、そろそろ重々ご承知であろう。

 

 

確かにアンリのスキル「劣化無効」は彼のスキルにぴったりと合うダンジョンとセットで用いれば最強へと至れる可能性を秘めたスキルであるのかもしれない。

 

 だが、何処まで成長したとしてもアンリ一人で何でもできるわけではない。彼一人だけ成長したとしても、彼を慕いついてきた者達も成長しなければ集団としての意味はない。そして、率いる者となった以上、もう踏み出す以外に道はなく。為政者である以上、部下達を率い養う事こそが彼にとっての責務である。

 

「問題が山積みだな。一つ一つ、潰していくか」

 

シリウスが率いていた銀爪氏族と合流し、彼等を率いる長となりいきなり大所帯となったアンリ率いる集団。

 

だが、喫緊の問題はすぐそばまで迫っている。今にも内乱が起きそうで、東西南北を犬猿の仲の国に囲まれていても、彼等を容易に潰しうる力を持つ王国からは逃げられず。ダンジョンと言う切り札はあるけれど、未だ居住には適さず、食料の問題から周囲の勢力との関係まで問題は何処までも山積みで。

 

更に彼等が今いるのは獣人の世界。故に流儀として獣人に合わせる必要があり、彼等の価値観に合わせる必要もあって。

 

 対外的に為政者に嫁の一人もいないのは問題であり、シリウスから偽装であってもエルフの双子のどちらかを嫁として扱うように、と提案を受けながらアンリは為政者として東西奔走していく。

 

部下達を率い迷宮を探索し、居住可能な場所を探し。またある時は妖精とワームと絆を繋ぎ。更にある時は、交易路を開通させ外貨を得る為の輸出品を模索したりして。

 

 何もかも足りない、それを解決するための知恵も足りない。だからこそ手探りでも、総当たりでも一歩ずつ。次々と襲ってくる難題に立ち向かいながら、少しずつ周りとのかかわりを作っていくアンリ達。

 

この作品は大きな枠組みの中、まるで大河のように少しずつ進んでいく作品であり、故にまだ彼等は戦うには程遠く、そこまで至ってはいない。

 

故にこそ種をまき、育てて一歩ずつ。先に至る為の準備の種を埋めていく今巻。

 

大きな枠組みで進むファンタジーがやはり好きという読者様、前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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