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読書感想:黒白の勇者1 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、この作品の前巻を読まれた読者様はご存じであろうが、異世界に転移した彼等は高校一年生である。まだ十五歳くらいの子供である。まだまだ繊細な、発展途上の心を持つ子供達である。そんな彼等に、異世界の命運を背負わせていいのだろうか? その細い肩に、生死という重荷を背負わせても良いのだろうか?
そんな事は言うべきではないだろう。彼等はもう戦う事を選んでしまったのだから。だが、彼等は未だ知らない。戦うと言う事の本格的な意味を。今まで隣にいた者達が突然いなくなったら、どうなってしまうのかを。
異世界に来て早一か月、コンプレックスも気にならなくなるほどに戦い続け、戦いが日常となり始め。機動力向上のため、乗馬を習ったりと新たなスキルを身に着けていく雪斗達。
戦いの後、「信奉者」の影も形もなく。しかしそれが仮初の平和につながる訳もない。勇者パーティに要請されたのは国外への遠征。王国の南東に位置し、敵方へと寝返った将軍の手により危機へと陥るシャディ王国の救援である。
パーティを王都防衛組と遠征組二つに分け、海維や芽衣、セシルと共に向かう異国の地。この世界を守る為、戦い続けなければならぬ運命は続く。
初めての異国で出会う、新たな絆。その絆は彼等の考え方に一石を投じるきっかけとなり。同時に、王国での戦いは避けられぬ展開、かけがえのない存在の喪失を引き起こす。
シャディ王国の軍隊を率いる王女、ナディに引き抜きの勧誘をされ揺れる雪斗の心、それを見て、今までにはない考え方が浮かぶ芽衣の心。
「後は任せた・・・・・・前を向いてくれ。後悔だけは、するなよ」
だが、彼等の目の前で仲間の命は奪われる。因縁の敵であるザインとの激突、その中で二人の仲間の命が奪われ。自身の責任だと、海維の心は千々に千切れていく。
「俺は、カイの味方であり続けるよ」
その彼へと、トラブルにより閉じ込められた迷宮から新たな力と共に脱出した雪斗は手を差し出し。その手を取り、彼は再び立ち上がる。
そう、忘れてはいけない。彼等は勇者であっても、例え強力な武具を持っていたとしても、無敵ではないし不死な訳でもない。だからこそ、この犠牲は必要なものだったのかもしれない。もう一度、この戦いについて見直し、心を決めると言う意味でも。
何処までも真っ直ぐ、現実的だからこそ骨太。そういった激闘がまた一つ、面白さのボルテージを上げていく今巻。
前巻を楽しまれた読者様、やはり王道ファンタジーが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。