前巻の感想はこちら↓
読書感想:黒白の勇者3 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で多くの犠牲を払いながらも宿敵であるザインを討滅する事に成功した海維と雪斗達。内通者であるグレンを取り逃がしたものの、これ以上の情報流出という最悪の事態は避けられる事態になった訳であるが。画面の前の読者の皆様はこうは思われないであろうか。このまま彼等が霊具を成長させ戦力を増すなら、邪竜なんてもうすぐ討伐されるのでは、と。このままいけば一本道、ならば果たしてここから波乱があるとしたら、どうなるのか。
その答えは簡単に示される、今巻の中で。忘れてはいけぬ、この作品の物語は決して彼等に優しくはないという事を。既に次の波乱の種は蒔かれている、しかもすぐ近くに。
「この考えは正しい。僕の本心・・・・・・そのはずだ」
グレンの失踪、そして信奉者たちの暫しの雌伏。激戦の後で不意にできた束の間の平穏、だが安寧の中にはいられぬ。この間にレベルアップを目指し、雪斗はかつてこの世界に来ていた祖父の事を知る竜人の元を訪ねる事を決めるその横。雪斗の心の中を言い知れぬ喪失感が擽る。果たして何を忘れているのか、それは分からぬ。だがグレンによる召喚から全ては始まっている。
冬から春に向けて進む各々のレベルアップ。その成果を示す、決闘試合。連合軍と信奉者たちの決戦を前に、雪斗達を始め、セシル達も実力の上昇を示す。
だが既に波乱の芽は芽吹いている。試合を横目に、瀕死ながらも生き抜いていたザインと接触し、彼の魔法で喪失感の源、欠落した記憶が目覚めた海維は一人、城から姿を消す。
「あることをきっかけに、僕は思い出したからだ」
そして、海維は決戦の最中、雪斗達の前に現れ突然牙を剥く。その理由とは、彼が思いだした根源の野望。優等生のリーダーのように見えていた彼は、実は根っこはこれ以上ない程に悪。誰にも知られずにいた歪んだ野望を邪竜に目を付けられ。邪竜から全てを聞いた上で、その思惑に乗っかり味方すらも騙す為に敢えて記憶を消していたのである。
「今度こそ、カイを止めてみせる」
ならばもう、彼等の道は交わることは無い。海維による連合軍への蹂躙、対し雪斗が新たに繰り出すのは、神の一柱であったリュシルとの融合という一手。
連合軍が魔神と化したグレンとぶつかり合うのを横目に、限界を超え海維にぶつかっていく雪斗。だが、壁は高く、最後の最後で一矢報いる事しか出来ず、海維はザインと共に去っていく。
やはりそう簡単にはいかぬ、新たな戦いの幕が上がる今巻。シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。