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読書感想:黒白の勇者2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
人間、死ぬ時は死ぬ。例えどれだけ注意していても、自分の身を守ろうとしても、避けられぬ死は確かにある。前巻を読まれた読者様も理解されているであろう。彼等は確かに強力な力を持っている。だが、それだけだ。強力であっても、無敵のチートを持っている訳ではない。そして、彼等はもう戦う事を選んでしまった。自分達が死ぬかもしれぬ道を、もう戻れぬ道へと突き進んでしまったのである。
進んでしまったのならば、果たすべき目的を果たすのみ。果たすべきは邪竜の討伐、信奉者たちとの決着。それを果たさずして、帰ることはまかりならぬ。
そんな彼等の元へ、一つの出会いが訪れる。その主の名はダイン。雪斗達の当面の追うべき敵であるザインの弟であり、根無し草の傭兵である。
ザインにより、証拠隠滅のために滅ぼされた故郷の仇を取る為に協力を申し出るダインを仲間に加え、雪斗達は新たな動きを始めていく。
雪斗は仲間や王国の騎士達、セシルやダインと共にザインを追跡するための霊具作成の為、滅ぼされた故郷を訪れ。掴んだ居場所の情報を追い、信奉者たちとの決戦が控えるベルファ王国へと向かい、天級霊具の使い手であるシェリス王女と国王と謁見し、霊具の強化の方向性を探し。
対し、海維は国元に残り、裏切り者を炙り出す為にリュシルや国の重臣たちと、謀略的な戦いへと身を投じていく。
それぞれの場所で始まろうとする戦い、その前に交わされる思いの中で見つめる、決戦前の選択肢。一先ずの一段落、分岐点が見えるからこそ。全てが終わった時、この世界に残るという選択肢も含め、雪斗達それぞれが己が道を見つめていく。
「道半ばで去っていくのを、許してくれ」
「俺は、傲慢だと思うか?」
だが、そんな思いすらも戦火は許さぬと踏み潰していく。決戦の中、仲間を喰らい魔神へと変化したザインの毒牙に級友達は倒れ。その死を悲しむ暇もなく、勝率の低い作戦の中で決戦は続く。
その最中、雪斗が見つけた自分の思い。その思い、貫くためにもザインを討つ。全てを賭け、全てを賭し。ダインの力も借り、届かせた必殺の一撃。
「お前はとんだ強欲だな!!」
だがしかし、彼等はまだ知らぬ。かろうじて生き延びていたザインが、邪竜に粛清されたと言う事を。その目的が、驚くべきものであったという事を。
まだまだ戦いは終わらない、それどころか更なる暗雲が立ち込める今巻。果たして最後に、何人生き延びる事が出来るのか。
シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。