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読書感想:剣と魔法の税金対策 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、異世界だって税制があると世知辛い。それはこの作品を読まれた読者様であればもうご存じであろう。話を少し変えるが、この現実世界においては様々なものに税金がかかるという事は、社会人の読者様であればご存じのはず。消費税は一番身近な税であり、市民税など、本当に有効利用されているのか分からぬ名目で徴収されている税も多種多様に存在する。では、この異世界には他にどんな税金が存在するのであろうか。
今回取り上げられる税金の名、それは埋蔵金等にかかる「一時所得」。そして、時にサスペンスの材料にもなるような骨肉の争いの元となる「遺産相続」である。遺産相続に悩まれる読者の皆様がおられたら、この巻を読んでみてほしい。遺産の内容はよく確認するよう。負の遺産まで間違って相続してしまったら大変な事になるので。
「お金がないんです」
将来において実りとなる経済特区。だが、始まったばかりの今は金食い虫。そして今、運営の為の資金は底を尽こうとしていた。このままでは巻き起こる事態は「黒字倒産」。普通に生きていればまず耳にしないような、いわば儲かっているのに倒産する、手持ちの現金が足りないという緊急事態。
メイのアイデアにより魔族達の素材を換金しようとすれど、メイの馴染みの業者から提示された額は予想よりも二桁は低く。それは、人間側の技術革新により不要となってしまったから。
そんなどん詰まりの中、かつて魔王に仕えていた魔女、ムーンバックが齎したのは初代魔王が遺した魔王の埋蔵金の情報。
だが、それこそが今巻の危機の呼び水となってしまう。埋蔵金、と言えば一体何が付き物であろうか。それは守る者、そして「呪い」ではないだろうか。
埋蔵金に紐づけられていた、少女の形を取った死の呪い、イリューによりあっけなく殺されてしまうブルー。ゼオスの計らいにより、霊魂として復活させてもらえたけれど、それでも「一時所得」による課税は免れる事は出来ぬ。
埋蔵金に絡むは、魔王家の分家の思惑。そして、歴史から削除された忌むべき非道を為した「魔王」の思惑。
次から次へと襲い来る危機的状況。残る期限はあと僅か。同時進行で事態を解決するために、別行動となってしまい、隣にいない大切な仲間。
だが、そんな中でもメイは己の力を振るい駆け、クゥは神と天使を相手に己の頭脳を頼りに訴訟を挑む。
「納税とは、命令や強制をすればいいものではありません。理想は、『納得して納めていただく』です」
大切なのはきちんと納税する事、けれどそれだけじゃダメ。ちゃんと納得して、後腐れなく納税するのが大切。その為に、ゼオスもまた協力し、皆の力で最高の結果を引き寄せる。
今巻を読み終えた時、貴方はきっとまた一つ、税に関して詳しくなれる筈である。
何処にもないファンタジーが好きな読者様、前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
剣と魔法の税金対策 (2) (ガガガ文庫 そ 1-2) | SOW, 三弥 カズトモ |本 | 通販 | Amazon