読書感想:どうか俺を放っておいてくれ なぜかぼっちの終わった高校生活を彼女が変えようとしてくる

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 さて、突然ではあるが今という季節は七月、つまりは夏であるのは当たり前として、高校生活と言う一瞬しかない時間においてはどんな時期であろうか。その答えは言ってしまえば簡単かもしれぬ。新しい学校、新しい学年。新しい生活が始まったとするなら、三か月も経てばある程度の人間関係が形成され、既にもう何処かのグループに入るのは難しくなってくる時分であると言えるかもしれない。

 

 

 さて、もう少し前説にお付き合い願いたいが、高校生活というのはラノベにおいて主な舞台となる舞台の一つであり、青春ものやラブコメものにおいては定番の舞台、と言ってもいいかもしれない。しかし現実は非情である。ラノベみたいな充実した青春なんて実際はほぼ存在しない、と言っても過言ではない。だがしかし、行動しなければ何も変わらない。何も始まらないのである。

 

 そういう意味においては、この作品の主人公である少年、穂高は行動しなかった例の極致と言っても過言ではない。しかし彼は、それを自ら良しとしていた。彼はボッチでも自分で選択したボッチであり、プロのボッチだったのである。

 

そんな彼の人生は唐突に閉ざされる事になる。卒業式の前日、空を庇ってトラックに撥ねられるという事故によって。

 

 異世界転生の始まり、その王道のパターンではあるがこの作品においてはそうはならない。実家が神社の家系である空の祈りにより、穂高は彼女と共に高校一年生の入学式の時間へと時を巻き戻し、復活してしまったのである。

 

「ぼっち脱却、私が手伝ってあげる」

 

二周目も何も気にせず一周目と変わらずぼっちでいる筈だった。が、しかし。何故かそれを良しとせぬ空のお節介で、彼はぼっち脱却を目指し自分を変えていく事になる。

 

 まず初めは誰かに話しかける事から。簡単な事から始めていく、ぼっち脱却のためのクエストとも呼べる空からの課題。それは一周目では取らなかった行動。その行動が静かに、少しずつ周りの何かを変えていく。

 

一周目では知らなかった、クラスのリア充グループの一人、ギャルの瑠璃の隠れた趣味。その趣味を守る為、かつての自分とは違い自ら泥をかぶり。

 

二周目もぼっちになる筈だった遠足、委員長の真白のグループに入れられるも周囲との軋轢を避けるために離脱し。その先で困っていた、一時的に仲たがいしていた空を勇気を振り絞って助け。

 

「でも、今の俺は花見辻と決裂したままだと後悔すると思った」

 

 正解なんて今も昔も分からないけれど、確かに踏み出したのは変化した心の現れか、それとも本来の自身の発露か。一先ず言える事は一つ。その変化こそが、穂高を魅力的な存在にしていると言う事である。

 

遠回りで捻くれていて残念で。けれど確かに吹き抜ける風は青春だ、アオハルだ。

 

一瞬しかない。例え二周目であっても。だからこそ、この作品は面白いのである。

 

捻くれた青春ものが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

どうか俺を放っておいてくれ なぜかぼっちの終わった高校生活を彼女が変えようとしてくる (GA文庫) | 相崎壁際, 間明田 |本 | 通販 | Amazon