読書感想:バンドをクビにされた僕と推しJKの青春リライト

 

 さて、バンドやろうぜ! という誰かのお誘いがあって始まる青春があったりするわけだが。バンドものというのは、ラノベにおいては中々新作が出てこない気がするのは私だけだろうか。やはり、音楽と言う絵で表すならともかく言葉で表すなら中々に難しいものだという事なのだろうか。 と、言うのはともかく。この作品においてはバンドものであり。そして、そこにタイムリープものを絡めていく作品なのである。

 

 

高校時代の軽音楽部から結成されたバンドで青春時代を駆け抜け、世界にその足跡を刻み。しかしメジャーデビュー直前で、条件として自身の脱退を付けられた事で脱退させられてしまった青年、融(表紙中央)。失意のままに酒におぼれる荒れた日々を送る中、飛び込んできたのはかつて同じ軽音楽部に属していた、今は推しのシンガーソングライター、時雨(表紙右)の自殺の一報。そのニュースは弱った彼の心にトドメを差してしまい。失意のままに彼も、自殺の道を選んでしまう。

 

「そうだな。やっぱり軽音楽部に入ろう」

 

 

が、しかし。意識が戻ってきた次の瞬間、そこに広がっていたのは高校一年生、まだ軽音部に入る前の光景だった。軽音部に入らない事も考えたが、やはり納得のいくやり直しをする為には軽音部でやり直すと言う事が重要であると信じ。改めて軽音部には入るも、今までの仲間と絡むのではなくこの時代においては、一人ストリートライブに励むだけだった時雨を口説き落とすべく、早速動き出す。

 

 

「だからさ、僕と一緒に青春をやり直さないかい?」

 

「そうしたら君もわざわざ出向かなくてもいいだろう?」

 

いっそしつこいと言える程暑苦しく、しかし真っ直ぐに時雨を口説きに行き何とか彼女の心を開いて。更に、一周目の人生では高校からドロップアウト、二周目の今では屋上にたむろする不良ベーシスト、理沙(表紙左)を見つけ、彼女も熱心に説得し。何とか形となったバンドが始動の時、を迎えようとする。

 

だが、まず最初に試練の時が訪れる。議員と言う大物であった理沙の父親を説得すべくイベントで結果を出す事を目指すも、まずその出場権を巡りかつての仲間たちとぶつかり合う事となり。その最中、時雨に関する面倒な昔の話が晒されてしまい。いきなりバンドが行き詰まってしまう。

 

「僕らは各々一人じゃどうしようもないくらい弱い。だからこうやって三人になったんだよ」

 

 だけど、もう一人じゃない。確かに一人なら弱い。だけどまるで三本の矢のように。三人で集まれば、乗り越える為の力が湧いてくる。学校をサボって急遽合宿に飛び出し、周囲の心配と侮りを余所に前を向いて。侮っていた者達を一撃で見返す歌を三人で響かせていく。

 

名前は一周目と同じかもしれない、だけど集った仲間は違う。一周目の人生で弾かれた、はぐれ者達の集まり。だけどそんな彼らだからこそ奏でられる音があるのだ。

 

真っ直ぐにバンドをする青春の熱さがあるこの作品。青春の熱を感じてみたい方は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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