前巻感想はこちら↓
https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/07/03/235954
さて、この二巻である今巻の感想を今から話していく前に、画面の前の読者の皆様に一言申しておきたい。今巻から、この作品は確かに面白さが溢れ出す。作品として一段階上の面白さに足を踏み入れる巻であると間違いなく言えるのが今巻である、と。
三大魔術学院の代表者達が名誉を賭けてぶつかり合う、魔術剣士競技会。腕に自慢のある者達が集う果てしなく燃えるであろう闘争の舞台。
その新人戦部門へと、アメリアは出場を決める。では我等が主人公であるレイは、果たしてどうするのか。その答えとしては、彼はまだ力が万全ではない事を理由に大会運営委員として裏方に回るという道。
運営委員として、レイが出会い新たに仲間となる少女が一人。彼女の名はクラリス。三大貴族に迫る貴族の令嬢でありながら、虫が好きでありハンターに憧れる少女。
そしてここから、光が当たっていくものがある。それはレイやアメリアのちょっと残念な所の素顔。しかしそれは、年相応であり人間臭いと言える部分の素顔である。
「やはり、君の家は素晴らしいようだな。是非ともいつかはその父上ともお話をしてみたいものだ」
クラリスを師匠の教えに基づき自然に褒め、いきなり勘違いさせるようなまるで鈍感な主人公のような台詞を放ったかと思えば、他校に偵察の為に潜入する為に誰も一発では分からない女装で、リリィ―という名を用いて潜入してみたり。
そんな中でレイは出会った。アメリアの幼馴染であり、現状アメリアの上を行く実力を持つ令嬢、アリアーヌ(表紙右)に。
彼女に勝ちたいと願うアメリアにレイは話を持ち掛ける。ならば自分が鍛えて見せようかと。
そこから始まる特訓の名はエインズワース式ブートキャンプ。レイの師匠であるリディアが考案しレイも幼き頃に潜り抜けた地獄の訓練。
「返事はレンジャーだと言っているだろうッ!」
「れ、レンジャーッ!」
まるで軍隊式の訓練であるかのように、特訓する中でアメリアの残念な部分が垣間見えてしまったり。
だがしかし、教官となったレイでも触れられなかったものがある。それはアメリアの心の中にある数々の負の感情、そしてアメリア自身を縛っていた鎖。
何故触れられなかったのか。それはレイにとって初めて出来た友人だったから。距離感が分からなかったから。
だけど、触れられるのはレイしかいない。
「大丈夫だ。アメリア。俺は見ているから。そして、信じている。きっと君なら勝てると」
レイから勇気と意味を貰って挑むアリアーヌとの決勝戦。そこで目覚め羽ばたく真紅の蝶。その名は「因果律蝶々」。因果を己の願うがままに制御する、アメリアだけの魔法。
更なる展開を見据え登場人物達の魅力を深め。そして丁寧に組まれた魔術がぶつかり合う熱いバトルの面白さを更に高める。
間違いなく作品としての面白さが更に上がるのが今巻であり、王道ファンタジーとして一つの極致を越えその先へ踏み込んでいくのが今巻なのである。
王道ファンタジーが好きな読者様、前巻を楽しまれた読者様は是非読んでみてほしい。
きっと大きく満足できるはずである。