読書感想:モブから始まる探索英雄譚1

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様にお聞きしたい。創作の世界においては、ダンジョンが存在するということはファンタジーに分類される作品となる事が多い。そして異世界転移、若しくは転生だとしたら所謂チートな力が最初から身に着けているものかもしれない。―――だが、果たして本当にそんな事は可能なのであろうか? もし現実世界にダンジョンが存在するとしたら、容易く無双する事なんて果たして可能であろうか?

 

 

突然だが、予め前提条件に付いて話しておくとしよう。この作品は現実世界の日本を舞台にしているが、ダンジョンと言うものが存在している。そして「探索者」と呼ばれるダンジョン探索を生業とする者やギルド等の経済システムが存在する、ダンジョンが既に生活に根付いている世界である。

 

 そんな世界の片隅で十五歳で探索者となって早二年。スライムを狩り続ける少年がいた。彼の名前は海斗(表紙中央)。探索者として英雄を目指すものの、一階層で燻り続ける少年である。

 

だが、それも仕方のない事。この世界は決してファンタジーの世界などではなく、死んだらそれまで、そんな現実の脅威が存在する世界であり、普通の少年にとっては厳しい世界であるから。

 

小銭稼ぎのいつもの日々。だが、その日全てが動き出す。見た事のない色違いのスライムを倒したらドロップしたアイテム。それは「サーバントカード」と呼ばれる使い魔を召喚できるアイテムであり、時価数億円で取引されるほどの激レアアイテムだったのである。

 

そんなアイテムを売るのではなく、使う事を決意し。海斗の前に現れたのは、強力なヴァルキリーであるシルフィー(表紙左)。

 

 この出会いが全てを上手くいかせる鍵。・・・そう行けばよかったのだが、この作品はそんなに甘くはない。召喚されたシルフィーはレベル一であり、大飯食らいな燃費の悪い使い魔だったのである。

 

そう簡単にうまくいくわけではないけれど、それでも確かに強力な仲間。その力を生かすも殺すも、海斗次第。

 

そういう意味では、海斗はその力を生かす者としてぴったりの存在。きちんとシルフィーを可愛がり、彼女の力を生かす方法を少しずつ模索できる、堅実的な考え方の持ち主で。

 

 そう、この作品は決して無双系の作品などではない。一人の少年、海斗が少しずつ使える手札を増やしながら、一歩ずつダンジョンを潜っていく、そんな日常を積み重ねていく作品なのである。

 

新たな武器を購入し、アイテムの力で魔法の力を獲得し。防御魔法に優れたシルフィーだけではなく、魔法担当のアタッカー使い魔、ルシェリア(表紙右)を仲間に加え。時に隠し部屋を見つけて危機に陥ったりしながらも、一歩ずつ進んでいく。

 

「やっぱりバカだ」

 

「真性のバカですな」

 

全ては高嶺の花である幼馴染、春香に告白する為。けれど彼だけは気付いていない、彼女の気持ちを。

 

テグスの迷宮探訪録という作品をご存じであろうか? ご存じであれば、この作品はその作品に空気感が似ている作品であると説明したい。

 

ご存じではない読者様の中の、一歩ずつ現代ファンタジーが好きな読者様。日常を積み重ねていくタイプの作品が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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