読書感想:Sランク冒険者である俺の娘たちは重度のファザコンでした3

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前巻感想はこちら↓

読書感想:Sランク冒険者である俺の娘たちは重度のファザコンでした2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、アンナやエルザ達、カイゼルの義娘達はそれぞれの分野で天才と呼ばれる娘達である、というのはここまで読まれてきた読者様であれば既にご存じであろう。それは末娘、「賢者」と呼ばれるメリルも同じ。だがしかし、メリルは確かに天才である。けれど、天才だから持っていないものがある。それは、人間関係と言う一点においてとても大切なものである。さて、ではここで画面の前の読者の皆様に問うてみよう。その答えは、一体何であろうか?

 

 

答えは「友人」。このシリーズを追いかけられてきた読者の皆様であればもうご存じではないだろうか? アンナやエルザは職場の人間関係がきちんとある。カイゼルは言うまでもなし。だが、メリルだけは人間関係が驚くほど狭い。最愛の存在であるカイゼルと、大切な家族達以外との人間関係が驚くほどに希薄なのである。

 

前巻の最後、王都での騒動の犯人として指摘されたかつてのカイゼルの仲間、「賢者」のエトラ。

 

 彼女との再会はあっという間に叶い、真実を聞く条件としてそれぞれ実力が同程度のカイゼルの教え子達を一人ずつ選び、それぞれ一定期間の間にどれだけ成長させられるかで競う事となり。その中、メリルはカイゼル側の教え子として選ばれた、引っ込み思案な少女、ポーラと友好を深めていく。

 

あっさりとついた勝負。エトラが明かした真意、それは復活した魔王の眷属が王都を狙ってきているから力を試したというもの。彼女が特に期待外れだといい指摘したメリルの弱さ。真剣さが足りない、その根底にあるのは甘えであると。

 

「いつまでもあんたが傍にいてあげられるわけじゃないでしょうが。親は子供よりも先にいなくなるものなんだから」

 

「あんたがいなくなったとしても、ちゃんと自分でやっていけるようにする。それが本当の愛情ってもんじゃないの」

 

 そう、親離れと子離れ。いつか来る筈の別れの時。子供は親を、小さな手でもいつか追い越していくもの。その日の為にも、そして後の世を担う者達を真の意味で育てる為にも。家族以外の人間関係が、今、彼女に必要なのである。

 

不器用でも何でも、自分らしく。そんなメリルを見て友達として名乗りを上げたポーラは、意外と抜けてる彼女の真の姿を知り、近寄りがたいと思っていた彼女の本質に触れ、徐々に友情をはぐくんでいく。

 

その友情は、魔王の眷属襲来の際に事態を打破する鍵となる。例え人を操る力を持っていたとしても断ち切れぬもの、それこそを友情と呼ぶのだから。

 

「お前も、魔王も、俺たちも―――もう出る幕じゃないんだよ。老兵は去り、この世界は次の世代の子たちに任せるべきだ」

 

 これからの時代を作っていくのは、カイゼル達大人に非ず。出生に関する驚愕の事実の判明したメリル達、今を生きる子供達。その為ならば、魔王の眷属だって討ち果たす。それこそが最強の「パパ」の役目であるのだから。

 

メリルの成長に焦点を当て、一番の子供であるからこその成長の面白さを見せてくれる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様、やっぱり親子系ファンタジーが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Sランク冒険者である俺の娘たちは重度のファザコンでした 3 (オーバーラップ文庫) | 友橋かめつ, 希望つばめ |本 | 通販 | Amazon