読書感想:底辺領主の勘違い英雄譚3 ~平民に優しくしてたら、いつの間にか国と戦争になっていた件~

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前巻感想はこちら↓

読書感想:底辺領主の勘違い英雄譚 2 ~平民に優しくしてたら、いつの間にか国と戦争になっていた件~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品をここまで読んでこられた読者様であれば、この作品がいかに、あらゆる意味で狂気的であると言うのかはもうご存じであろう。その狂気の元凶である我等が主人公、リゼ。彼は魔王アンゴルモアの手により、存在ごと抹消された筈であった。抹消されたままの方が、この世界にとっても平和であったのかもしれない。魔族に支配されているという事実はさておいてでも。だが、リゼは死ななかった。死んでいた方が良かったかもしれないけれど、死んでいなかった。よって、彼が生きている限り狂気はなくならないのである。

 

 

その理由とは、女神ソフィアとなった狂気の王、ヤルダバートのせいである。リゼがいなければソフィアは存在せず、逆にソフィアがいなければリゼもまた存在しない。つまりは女神が生きている限りは、リゼの存在は消しきれないのである。よって、その膨大な魔力のほとんどを失いながらも、リゼはこの世界に存在していた。

 

 そして、勘違いを極めたリゼが魔王討伐に動かぬ訳もなく。そのやり口は、前回の世界と同じく狂気的、そして冒涜的に過ぎるのだ。

 

魔物達を回復魔法の応用で洗脳し、民衆の反抗心と戦闘意欲に火をつけ。狂戦士の群を引き連れ、魔族に支配された街への侵攻を始めるリゼ。

 

 その侵攻、もとい蹂躙。哀れ魔物達は思い出す、かつての世界の記憶を。自分が誰に恐怖を刻み付けられたのかを。人々は思い出す、自分達が誰に率いられ、戦いに臨んでいたのかという事を。

 

魔竜やクラーケン達と敵対すれど、あっという間に恐怖を思い出させて屈服させ。

 

ジャイコフやスネイルといった、かつての敵すらも味方へ変え。アリシアやイリーナ、更にはクラウスやベル、ホーエンハイムといったかつての世界の仲間達が彼の元へ集い、狂気のヒカリをその目に彼と共に歩きだす。

 

「「ああ、お前は話せばわかる奴だったよ。―――だが殺すッ!」」

 

 最早、どちらが正義で悪なのか。真の意味でバケモノと呼んでいいのはどちらなのか。今巻のストーリーは、仲間を増やして魔王城へと乗り込み、最終決戦を挑むと言う王道ファンタジーの流れを汲んでいる。・・・だが、そこに溢れているのは圧倒的な狂気である。自覚なき大悪人の領主と、彼の狂気に飲み込まれた民衆達が自身の命をも顧みず、その命を散らすかのように敵へと挑んでいく。その様はもう、何処までいっても「ヤバい」の一言に尽きる。

 

三巻にもわたって綴られてきた、狂気的で冒涜的な英雄譚。画面の前の読者の皆様もご興味があられたら是非。

 

ただし、何があっても自己責任でお願いいたしたい。

 

底辺領主の勘違い英雄譚 3 ~平民に優しくしてたら、いつの間にか国と戦争になっていた件 (オーバーラップ文庫) | 馬路まんじ, ファルまろ |本 | 通販 | Amazon