読書感想:僕の愛したジークフリーデ 第1部 光なき騎士の物語

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 さて、今更だがふと思い立ったことがある私である。それは、騎士道とは何だろうか、という事である。画面の前の読者の皆様はご存じであろうか。騎士のような清廉な登場人物が登場する作品は数多い。では一体「騎士道」とは何であろうか? 今更だが聞けないものであり、多くの作品では敢えて語られぬものである。

 

 

そんな騎士道というものは、有名なものは「騎士の十戒」というものがある。その中には弱き者の守護者である事、嘘偽りを述べぬ事、いついかなる時でも正義と善の味方となりて、不正と悪に立ち向かうべしという文言がある。この文言については読者様各自で検索していただくとして、調べてみると奥深いものがある。

 

 そんな騎士道に忠実であり、己が正義に殉じている最強の騎士であった少女が一人。この作品のヒロインであるジークフリーデ(表紙中央)である。

 

かつて、このとある異世界においては魔術師こそがスキルの花形と呼ばれ、戦場の主役として咲き誇っていた時代が長きにわたり続いていた。だが四十年ほど前、「反魔素材」と呼ばれるクズ鉱石を元に創り出した合金が魔術を相殺するという事が判明し、魔術師の時代は終わりを告げたのである。

 

そんな時代の片隅に存在するリーベルヴァイン王国。かつて慈悲深き名君の元に栄えていたこの王国は今、若き女王の元で粛清の風吹き荒れる、暗黒時代を迎えていた。

 

 その王国の片隅、野盗に追われていた魔術マニアの少女、オットー(表紙左)はジークフリーデと出会う。

 

彼女の両目は見えていない、その筈なのに、まるで何もかもが見えているかのようにその動きはよどみなく、剣術は何処までも流麗であり。だが、逗留先としている教会で子供達と遊んでいる時は、どこか不器用に、年相応に。

 

彼女の剣術に、新たな魔術の片鱗を感じ。邪険に接されながらも諦めず関わり続け。

 

 少しの間の穏やかな時間。だがその時間は長くは続かない。ジークフリーデは追われる者だから。騎士団から追放されても尚、騎士道を果たす為にこの国にとどまっているから。

 

「私は私の道で、この国に忠誠を尽くしている」

 

だが、彼女は言う。自分は自分の在り方でこの国に忠義を尽くしている。その目的は只一つ、かつての主君を止める事と。

 

 しかし、その誓いを自分で背負おうとも、彼女はあくまでも一人である。そして国から見放されようと、忠義を誓った以上、その忠義に嘘は吐けぬ。故に彼女は巻き込まれ、闇の中へと堕ちていく。オットーまでも巻き込んで。

 

いわれのない反逆者の汚名を着せられ引っ立てられた女王の御前。かつての後輩との哀しき決戦、その果てに自ら差し出したのは剣士の命。

 

だがしかし、まだ何も始まってはいない。まだこれからなのだ、何もかも。まだここから何もかも始まるのだ、何を失うとしても。

 

鮮血に彩られた重厚なファンタジーであり、鮮烈で痛烈であるからこそ読み応えのあるこの作品。

 

ファンタジーが好きな読者様、ダークな作風が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

僕の愛したジークフリーデ 第1部 光なき騎士の物語 (電撃文庫) | 松山 剛, ファルまろ |本 | 通販 | Amazon