読書感想:『人斬り』少女、公爵令嬢の護衛になる

 

 さて、刀、というのは実は斬る為のコツは西洋の剣とは違う、というのは画面の前の読者の皆様はご存じであろうか。そも、成り立ちからして違うので仕方のない事かもしれないが。一先ず刀、というのは使いこなすには一定の熟練度が必要であり。それが無かった、とあるガンダムの主人公は、最初の方は先の尖った鉄パイプ、くらいにしか使えなかったのである。

 

 

しかし、そう考えるとラノベで描かれる刀使いは、基本的には熟練者であって。だからこそ刀による戦闘シーンは、心が躍るのかもしれない。この作品の主人公、シュリネ(表紙)もまた、刀の達人である。ある人に仕える為だけに育てられ、言われるがままに剣術を学ぶうち、強者との戦いに喜びを見出すようになり。しかし十五歳の誕生日、任務開始の途端に対象人物が死に、殺人の汚名をかぶせられ。

 

「追ってくるのなら斬る。たった今、そう決めたよ」

 

しかし、彼女の気持ちは沈む事が無かった。それどころか、吹っ切れたと言わんばかりに大罪人の汚名を被る事も顧みず、追手を全員ズンバラリと切り捨てて。三か月後、リンヴルム王国と言う異国の東の街で。路銀の枯渇に悩みながら、それでも気の向くままに旅を続ける中。列車の中で彼女は、何者かに追われる公爵令嬢、ルーテシアとそのメイドであるハインに出会う。

 

「そういうわけで、今からわたしはあなた達の敵だから」

 

一人と二人の道は、列車の中での一時、となるかと思いきや。この国の王位継承問題に関わる彼女を狙う刺客の襲撃を受け、ハインの要請を受け、彼女の護衛を引き受ける事となって。迫りくる追手の数々を切り捨て、ルーテシアが支持する王女との護衛を目指し、動く事となる。

 

普通の道は使えない、だから忍ぶように人の目を避けこそこそと移動をしながら、しかし追手はまるで彼女達の場所を把握していると言わんばかりに、この国の「人斬り」を始めとし、多種多様な刺客が送り込まれ。更には敵の首魁である王子が自ら動き、傍らに仕える王国最強の騎士に敗北し、大けがを負って川に叩き落とされてしまう。

 

「言われなくても、わたしの仕事だからね」

 

だけど、それでも。間一髪で救ってくれた王女に止められても。それが仕事、やっと見つけた自分の仕事だから、と。寄る辺を得た彼女は、大けがを負ってでも、囚われたルーテシアを救う為に駆け出していく。 王女から託された力、魔力を吸う妖刀を片手に。王国最強の騎士と決着をつける為、再びの激突へ向かう。

 

彼女が彼女に出会い、激闘を繰り広げるこの作品。ひりつく中で目覚める百合が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

『人斬り』少女、公爵令嬢の護衛になる (GCN文庫 サ 01-04) | 笹塔五郎, ミユキルリア |本 | 通販 | Amazon