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読書感想：辺境都市の育成者２ 再来の宝玉 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、エピソードゼロ的な立ち位置であった一巻、全ての始まりとなり、倒すべき敵も現れた二巻。その二冊を経て、三巻では何を行うのか、は前巻を読まれた画面の前の読者の皆様であれば、ご存じであろう。
ハルに関わる過去の因縁の清算の為、そして弟子の顔も見ておくために。タチアナをお供に辺境都市を飛び出し、彼女達の本拠地である迷宮都市を訪ねたハル。
そこに住まうは、様々に夢を抱えそれぞれの人生を生き抜く者達。「薔薇の庭園」の若手三人衆、ヴィヴィ、ソニア、マーサ。タチアナに好意を抱く高位冒険者のカール。そんな若き息吹に触れ、時に戦いを挑まれちょっとした授業がてらに手慰みに圧倒的な力（手加減付き）を見せつけたり。
だが、片手間に終わる筈だった模擬戦の最中、ハルは不可解なものを目にする。自分に戦いを挑んできた者の一人、「光刃」と呼ばれる高位冒険者のトキムネ。彼には決して光属性の力なんてない、それどころかその力は忌むべきものから得た禁忌の力である。あっさりと見抜いた彼の目に映るものとは。
それは、「魔神」の欠片の一片。忌むべき力が確かにここに存在している。そして、「全知」の遺児達がそれを知らぬ訳もなく、狙わない訳もなく。辺境都市ではなく迷宮都市を舞台に、次なる戦いは幕を開ける。
遺児の一人、ユマという幼き少女が巻き起こした魔物達の大氾濫。ユマが操る、大迷宮の階層を統べる強大なる魔物達と、ハルの弟子であるハナ、そしてタチアナを始めとする冒険者達との死闘。
その最中、ハルと弟子たちの目の前で。遺児達の手により、災厄にして最悪の存在が顕現する。それは影、只の影。だが、只の影に非ず。其は、「六英雄」の筆頭で在り、世界を二度救った「勇者」、アキ。その影である。
何処か打ちのめされたように哀し気に、そして彼女を眠らせたいと願うかのように。ハルは一人アキとの戦いへ臨み、レベッカとタチアナは目の当たりにする。彼の近接戦闘の底力、上り詰める所を極めても尚追いつけぬ、彼が戦う強さの頂の力を。
「『これが始まり』だって？ もうとっくの昔に全部終わっているんだよ？ それなのに、それでもなお君は、君達は・・・・・・・この世界を、僕を許してはくれないんだね」
途方に暮れたハルが流す涙の意味は何か。勇者と既知の関係であった事を匂わせる彼にはどんな過去があるのか。一体、この作品の舞台の今巻はどこまで根深く作られているのだろうか。
育成者は語り、弟子たちは協力を表明し。そして最古参の者達、正しく天変地異の強者達も続々と集い始める今巻。
前巻を楽しまれた読者様、是非今巻も読んでみてほしい。
全てはここから、更に加速するのだから。
