読書感想:辺境都市の育成者6 伝説の育成者

 

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読書感想:辺境都市の育成者5 神降りし英雄 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、突然ではあるがこの作品は今巻が最終巻、クライマックスである。故にこの巻では今まで伏せられてきた謎の全てが明かされる。それは「秋が死んだ理由」も然り、そして「ハルの正体」もまた然り。最終決戦へともつれ込み、「剣聖」、冬夜との決戦が繰り広げられる巻なのである。

 

 

「こういうでかい渦の中心にはいつも、我等の育て親ありだ」

 

留守番を任された最古参の弟子、「神剣」のソラと「星落」のラヴィ―ナが事態の裏にきな臭さを感じ、大乱の予感を感じながら。激烈な貴族主義の国でありレベッカの故郷でもあるレナント王国で三列強の首脳会談の日取りが近づく中でそれぞれ動き出すハル達。その陣営の一人であるレベッカの元に届いたのは、妹であるシャロンからの久々の手紙。

 

 ハルにより「六英雄」の真実の半分が明かされ、時間もなく向かう王国。レベッカは貴族のつまらぬ陰謀に巻き込まれそうになっているシャロンを救うため、忌避していた存在である父親と刃を交え、圧倒的な力で勝利を掴んで見せる。だがそんな彼女達の前に姿を見せた冬夜は、ハルの正体を仄めかし去っていく。

 

「少し前に話した、彼と彼女の話の続きをしよう」

 

ハルの弟子達も集い、決戦の準備が整い始める中。ハルがレベッカに明かした話の残り半分。そこに隠されていたのは、勇者の死の真実。そして、ハルという存在が何者であるのかという正体の提示。

 

「世界で一番の育成者さん。それ以上でも、それ以下でもないわ。そうでしょう?」

 

だがそんな事は関係ないと。レベッカはハルの魔法を破り毅然と告げて。ハルもまた覚悟を決め、決戦の場へと向かう。

 

始まる決戦、オーダーは至極簡単、正面から迎撃し手駒を最大戦力による各個撃破。ハル、レベッカ、タチアナの三人がかりでも互角程度にしかなれぬ激闘の中、それぞれの策がぶつかり合い最大の一撃が火花を散らす。

 

「どうもならないよ」

 

だが、その果てに訪れたのは「協力者」、最古参の弟子であり裏切り者。決戦が顔合わせの様に打ち切られ、なんとか事態は乗り切り。その果てに世界は更に変化を始めていく。

 

この世界に訪れていく、「神無き時代」。その世界で、人の時代が来る世界で。必死に生き抜いていく彼等一人一人。その小さな命で紡いだそれぞれの歴史が、世界の歴史となり波乱が続く人の世を何とか存続させていき。

 

そして、ハルやその弟子達が徐々に去りゆく中。時代と課題は新たな英雄の卵、「彼」に託されていくのである。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

最後まで満足できるはずである。

 

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