前巻感想はこちら↓
読書感想:辺境都市の育成者3 迷宮の蒼薔薇 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、ここから全てが加速すると言う話を私は前巻の感想で話したかと思う。その言葉の通り、今巻は全てが加速していく巻である。そして、我々は未だ知らなかったことがあったのかもしれない。それは一体何か。それは、ハルの影響力の底知れなさ。そして、ハルの数多い最強クラスの弟子たち。その本当の強さである。
確かに、弟子の中でも新顔な方であるレベッカは「雷姫」との異名を持っている。最古参の弟子でもあるエルミアは「千射」の異名を持っている。
だが、最古参クラスの弟子はエルミアだけではない。彼女にも劣らぬばかりか、もっと大変な実力を持つ者達ばかり。レベッカとは正に次元の違う最強の力を持つ弟子達が舞台に上がり、更に舞台をかき乱していくのが今巻である。
「はい。真、愚かでございます。特に―――貴女様が」
ハルが関与せぬ極東の地、「女神の遺灰」を狙い侵攻する「全知」の遺児。しかしそれを阻む影が一つ。その名はアザミ。ハルの弟子の一人であり、「東の魔女」と呼ばれる極東で最強と呼ばれる一人。
そして、今回世界最大の都市、とある帝国の帝都を脅かすのはハルの最古参の弟子の一人である魔女、ラヴィーナ(表紙手前)。大陸中に悪名的な御伽噺を轟かせる魔女であり、「星落」の異名を持つ、絶対的な悪行的伝説を持つ、ハルの狂信者である。
普通であれば、ハルが帝都を滅ぼす事なんて望まないと分かるであろう。だが、分かっていても、そうだとしてもラヴィーナは明確な怒りと共に、帝都を滅ぼさんとその絶対的な力を振るう。
それは何故か? それは、ハルと初代皇帝が交わし、歴代皇帝に口伝でのみ伝わる古の約定を違えたから。そして彼女こそは、全てを知る一人だから。だからこそ許せなかったのだ、帝国の蛮行が。
明かされるのは勇者の死の真実、何故「全知」達は世界を壊そうとしたのかというその秘密。
過去から続く因縁と、過去から続く遺恨と約束。その全てを受け止め見届け。それでも今、世界を崩壊させるわけにはいかぬ。ましてや最愛の弟子の一人には。
だからこそ、とハルはラヴィーナの前に立ち塞がり本気で諭し。本気のぶつかり合いの最中、彼等を余所に顕現したかつての災厄の一部へ本気で立ち向かう。
だが、どうやらこれで終わりではないらしい。「魔神の欠片」どころか「女神の遺灰」などという新たな因子も舞台に絡み、世界にはまだまだ、それこそ最古参の弟子達すらも簡単には立ち向かえぬ強者達が潜んでいる。
「ハル、私はずっと傍にいるからね?」
けれど、それでもハルは立ち向かっていく。かつて優しき「勇者」と交わした約定を守る為。その背に続くは沢山の、圧倒的な力を持つ弟子達。
更に世界は深みを増し、加速の度合いを高めていく今巻。
前巻を楽しまれた読者様、シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。