読書感想:未来から来た花嫁の姫城さんが、また愛の告白をしてとおねだりしてきます。

 

 さて、未来から来る、というのはタイムリープであるが、未来から来る場合何らかの制約を持っている事が多い、というのはSFを嗜まれる読者様であればご存じであろう。そも、未来から過去に来て過去に干渉するという事は、未来を変えてしまう事に他ならぬ。あまり歴史を動かし過ぎると、世界からの修正力が、なんて事態にもなりかねない。ではそんな状況であっても、何故人は過去に向かうのか。それ即ち、それでも変えたい過去がある、という事に他ならぬのである。

 

 

背が低くて童顔がコンプレックスな少年、白馬(表紙左)。彼はクラス替えで片想いをしていた相手である高嶺の花、冬花と同じクラスとなり、舞い上がった勢いそのままに告白するも当然のごとくフラれてしまい。賑やかでお節介な幼なじみ(彼氏持ち)、香奈子から惚気ついでに人気の占い師を紹介され、ものはためしと向かって見るも、その占い通りに冬花の前で無様を晒してしまうと言う、泣きっ面にハチという事態を迎えてしまう。

 

「―――わたし、約束された未来の花嫁なのっ!」

 

が、しかし。ウェディングドレス姿で現れた「冬花」はよく見るとどこか大人っぽく、いつもの彼女とは全く違った印象を与えてくる。困惑の中、トウカ(表紙右)と呼んできた彼女は、衝撃の事実を白馬に告げる。自分は六年後、白馬との結婚式の直後からタイムリープしてきたのだと。

 

訳も分からぬも、未来のガジェットに保存されていた結婚式の動画を見て信じざるを得ず。ガジェットを作る系の魔女であるトウカの祖母の作った道具により転移してきた彼女は、この時代でやるべき事があるといい、白馬の家に居候となる。

 

未来からほぼ身一つで来た為、そもそもこの時代では使えないお金やらガジェットしか持っていないトウカをこの時代に迎合させるために彼女と共に金策に走ったり。更には妹への誕生日プレゼントに悩む冬花に遭遇し、ナンパ男を得意のマジックで撃退しつつも彼女の相談に乗り、少しだけ近づいたり。二人の彼女と過ごす、温度差に振り回される日々の中。その目的であった、妹の誕生日が近づいてくる。

 

この時代においては、とある出来事から中止となってしまう誕生日パーティー。それを滞りなく過ごさせるために、彼女の妹を気に掛ける事になり。だが、やはりトウカが飛んできたという因果は歴史を揺るがす要因となり。本来ならばあり得ない筈だった、高名なマジシャンの弟子との対決という想定外の事態が巻き起こる。

 

勝負を分けるのは、彼にしか出来ぬ最高のマジック。二人の彼女を巻き込んだ、一世一代の大勝負。その先、トウカはこの時代に来た目的のもう一つを果たすために駆け出していく。

 

「―――いくらでも力を貸しますよ。何せボクはあなたの未来の旦那様なんですから・・・・・・」

 

故に未だこれは、始まったばかりのラブコメである。変化球に見えて直球の、一途な思いの巡るラブコメである。そして未熟な王子様が、歩き出していくお話なのである。

 

ちょっぴり不思議な、真っ直ぐなラブコメが読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

未来から来た花嫁の姫城さんが、また愛の告白をしてとおねだりしてきます。 (MF文庫J) | ニャンコの穴, ミュシャ |本 | 通販 | Amazon