さて、突然ではあるが私は一つ、疑問というか自分の中で永遠の議題となりかけている命題が一つ存在すると告白したい。その命題とは、「追放ものの良さ」である。
追放もの、それがどんなものであるかは小説家になろうを嗜まれる方が画面の前の読者の皆様の中におられれば既にご存じであろう。嗜まれない、またはどういう作品なのか分からないという方は、小説家になろうの公式サイト、その日間ランキングのハイファンタジー枠を覗いてみてもらいたい。恐らくそこには、様々な追放ものの作品が掲載されているはずである。
追放ものとはどういうものか。王道パターンを個人的目線から簡潔に言うと、様々な状況から追放された主人公が実は隠された力を持ち、認められそれぞれの形で幸せになっていく裏で追放した者達が不幸になり衰退していく。これが基本パターンである。
世相を反映したかのようなこのブーム。このブームに一石を投じんとするキャッチコピーを掲げているのがこの作品である。
ステータス主義が流行し、魔物と冒険者が存在する、よく言えば王道的、悪く言うならよくある、そんなパターンのとある異世界。
「その子を追放するんですか? じゃあウチが貰いますね」
かの異世界に、ステータス主義に疑問を持ち、その風潮を変えたいと願う青年がいた。彼の名はアイゼン(表紙右端)。ギルドマスター育成学校を卒業したばかりの青年であり、中々ギルドマスターの職業につけぬ落ちこぼれである。
では、彼もまた育成学校から追放された落ちこぼれとでも言うべき存在なのか? 答えは否。彼は能力的に言えば落ちこぼれではない。彼が職業につけぬ理由は只一つ。今、ギルドの圧倒的主流である「ステータス第一主義」という考え方に、真っ向から反論する自分の考え方を曲げぬから。
彼には一つの隠されたスキルがあった。その名は「鑑定眼」。ファンタジーを嗜まれる読者の方であればその効果は、もう察しがついておられるであろう。その効果は、対象者の隠しスキルを見抜くと言うものである。
そのスキルにより、アイゼンは追放された少女達の中に眠る最強の原石を見出し、彼女達を仲間に加えていく。
臆病な斥候の少女、ヴィリーネ(表紙中央)の中に眠っていた力、「超第六感」。それはモンスターの出現位置から弱点、更にはダンジョンのトラップに至るまで全てを丸裸にする力。
気が強いが何故か不運な魔法使いの少女、マイカ(表紙左端)の中に眠っていた力、「巫の祝福」。それは一度の戦闘の中、味方一人への攻撃を三回まで無効にする、条件付きなれど無敵の力。
では、そんな強大な力に自分達が助けられてきたことも知らず追放してしまった者達はどうなるか。言うまでもないだろう、壊滅、そして没落。王道をなぞるかのように落ちぶれていく。
対し、ダンジョンでの依頼もさくさくとこなし、強敵な魔物すらもスキルの合わせ技と咄嗟の機転で制し。ギルドの総代にも注目されるアイゼン達「追放者ギルド」の面々はどんどんと成り上がっていく。これもまた、王道をなぞるかのように。
そんな追放ものの王道をこれでもかと描いているのがこの作品であり、王道だからこそ突き詰められた面白さがあるのである。
追放ものが好きな読者の皆様、ファンタジー好きな読者の皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。