読書感想:技巧貸与〈スキル・レンダー〉のとりかえし1 ~トイチって最初に言ったよな?~

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 この本の感想を書いていく前に、画面の前の読者の皆様に一つお聞きしたい。皆様の中で、借金を現在進行形で抱えている、もしくは借金を抱えた経験のあられる読者様はおられるであろうか。借金の先が友人であるのならば利息の問題は、友人の厚意という形で免除される事もあるかもしれない。しかし、金融会社で借りる時はよく契約書を読み、闇金に当たらないように注意したい。闇金闇金の顔をしていない、一見して闇金と分かる業者なんてそうはいない筈なので。

 

 

スキルや魔物、ダンジョンや亜人。ファンタジーとしての王道の要素が揃ったとある異世界。その前人未到のダンジョンの最深部で、この作品の主人公である青年、マージ(表紙中央)は今、Sランク冒険者パーティの仲間達から一方的に切り捨てられ、ボス戦を強要されていた。

 

「貸したスキルを返してくれ。ただし利息はトイチだ」

 

 戦えば死、あるのみ。そんな状況の中、マージは仲間達に頼みを告げる。その頼みを仲間達が聞いた途端、破滅が仲間達に訪れる。

 

それは何故か。それは、マージのスキルが「技巧貸与」と呼ばれる、他人に利息を付けてスキルを貸し出せるというユニークスキルであったから。「技巧貸与」による強制的な取り立てに約11億倍という法外な利息を伴わせ。全てを取り上げ、全てを掴み。ここからマージの成り上がりが始まる。

 

手始めに、アシスト機能であった人格、コエ(表紙右)に身体を与え。一歩踏み出したマージは歩き出すのも早々、奴隷であった少女、シズク(表紙左)に出会い。不当に貶められていた彼女を、雇い主から救い出したのも束の間、彼女から自分の故郷を救って欲しいとお願いされる。

 

「借りものの王位。それくらいが俺には丁度良い」

 

「俺は奪われた者たちの王になる。奪われたものを奪い返し、その先を作る王だ」

 

 彼女の故郷を脅かすダンジョンの脅威、そして人間の思惑。その全てを跳ね除けたマージは、獣人達に請われ。幼きシズクが成長するまで、彼女の代わりに指導者となる事を決める。

 

ここから本格的に始まる、王としての領地経営、更には自分を追い襲来してきたかつての仲間達との激突と言った圧倒的な蹂躙のバトル。

 

しかし、彼はむやみやたらと力を振るう暴君ではなく。借り物の王だからこそ、謙虚に。ただ約束を違えた者共へと牙を剥ける王として、彼だけの王道を進んでいくのである。

 

王道な追放ものの面白さがあるのが今作品であり、なろう系ファンタジーが好きな読者様には是非お勧めしたい。

 

そういう作品が好きな読者様は、きっと満足できるはずである。

 

技巧貸与のとりかえし 1 ~トイチって最初に言ったよな? (オーバーラップ文庫) | 黄波戸井ショウリ, チーコ |本 | 通販 | Amazon