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読書感想:声優ラジオのウラオモテ#03 夕陽とやすみは突き抜けたい? - 読樹庵 (hatenablog.com)
水樹奈々、田村ゆかり、釘宮理恵。このお三方のファンの読者の皆様、唐突ながら敬称略して誠に申し訳ございません。普段は様付けで呼ばせていただいておりますので。さて、このお三方の共通点は画面の前の読者の皆様はお分かりであろうか。そう、お三方とも既に超有名、押しも押されぬ女性声優界のレジェンドの方々です。
しかし、女性声優界は無論、かのお方たちのみで成り立っている訳ではない。
表舞台で輝けるのは氷山の一角、数多の好敵手達と立ち位置を奪い合い、勝ち取った先に今の立場を手に入れた星の影、散って日の目を浴びぬ幾多の影、無名の女性声優たちが沢山いる。それが声優界という世界であり、夕陽とやすみが共に生き抜く戦いの舞台である。
ラジオの視聴者から送られてきた、二人は本当に不仲なのではないかという疑問。その疑問の払しょくのため、そしてこのラジオを続けるために。二人お揃いのセーラー服に着替えて、花火とめくるも巻き込み、仲良しとして疑似修学旅行へ挑む夕陽とやすみ。
「佐藤って、セーラー服似合わないわね」
「は、腹立つ~・・・・・・、なんだあいつ・・・・・・」
が、しかし。そう簡単に仲良く出来たら苦労はしないし、二人とも割と本当に不仲に等しい。けれど二人が本音でぶつかり合う事は何よりも重要であり、それがあるからこそこのラジオはある。
『わたしの隣には・・・・・・、わたしの声優としての人生には、歌種やすみは必要なんです』
そしてお互い心に隠した、相棒であり好敵手である相手へのリスペクト。それをお互い意図せず曝け出し、本当の本音をさらけ出す二人。
そんな二人は、先輩である乙女の過労による休養、その先に起こり得る一つの可能性の結実を目にする事となる。
今までも時折曝け出された業界の厳しさ、それは再び牙を剥く。
そう、この声優界という世界は決して甘くはない。まるで生き馬の目を抜くかのように相争い、誰もが好敵手を蹴り落そうと狙っている。だからこそ、仕方のない事でももし休養という隙をさらけ出してしまったのなら。不意に椅子を空けてしまったのなら。
そこに待つのは、自らの居場所を奪われ、誰の記憶からも忘れられ消えていく未来。かつて切磋琢磨した好敵手が一度立ち止まった時、また歩き出したとしてもそこには溝があるばかり。
「あなただけじゃなく、ほかのだれにでも。桜並木さんの心を解放できるのは、あの人だけだったんだわ。それは、佐藤にもわかるでしょう?」
乙女とかつてのライバル、秋空。もしかしたら未来に起こりうるかもしれぬ、自分達の可能性の一つ。
その可能性を見、本音をぶつけ合い。どんどんお互いが大切になっていく。あらゆる意味で唯一無二となっていく。
好敵手であり相棒、そんな唯一無二の関係の尊さが更に深まり、一種の安定感を醸し出していく今巻。
シリーズを愛されている読者様は是非。今巻もまた、最高である。
声優ラジオのウラオモテ #04 夕陽とやすみは力になりたい? (電撃文庫) | 二月 公, さばみぞれ |本 | 通販 | Amazon