読書感想:信じてくれ! 俺は転生賢者なんだ ~復活した魔王様、なぜか記憶が混濁してるんですけど! ?~

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はお笑い芸人のアンジャッシュはお好きであろうか。あのコンビの芸風、勘違いとすれ違いが絡まり合うコントで笑われた読者の皆様はおられるであろうか。

 

さて、この作品の作者で在られるサトウとシオ先生と言えば、たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語」、通称「ラスダン」シリーズで有名である。当たり前である、かの先生は新人賞でデビューされた作家の先生であり、今アニメ化まで上り詰めた先生で在られるので。

 

 では、かの「ラスダン」シリーズの面白さの根幹とは一体何であろうか。その答えは、「ラスダン」シリーズを読まれたことのある画面の前の読者の皆様であればもうお分かりであろう。勘違いとすれ違い、シリアスすらもぶち壊す怒涛の勢いの如きコントがその魅力である。

 

その魅力がこれでもかと突き詰められたのが今作品であり、その面白さを楽しめるのが今作品なのだ。

 

舞台となるのは、十五年前に勇者により魔王が討ち滅ぼされ、魔王軍の残党が魔王復活を目指し動き回る異世界。かの異世界で、魔王に育てられた少女であり魔王軍残党の一人、サシャ(表紙右)は運命の出会いを果たしていた。

 

 その相手の名はアルト(表紙中央)。凄腕の運び屋の少年であり、かつて魔王が使いこなした魔法を使いこなす、正しく魔王の転生体の少年である。

 

「転生した賢者なんだろ?」

 

が、しかし。復活した魔王であるアルトは記憶の混濁により、何故か自分の事を「賢者」だと誤認していた。そんな人間は勇者パーティには存在しなかったのに。しかも彼は世間に流布されている魔王の悪行を信じ、自身が魔王だったら死ぬとまで言いきっていた。

 

思い違いと自己暗示にも等しき勘違いに一々ツッコミながら頭を抱えるサシャを尻目に、アルトは正義に目覚めたと言い張り、サシャを伝手として騎士団へと入団する。

 

 人間に敵対するはずの魔王が、人間の騎士団に入団すると言うどう考えてもツッコミ必死なこの状況。しかし、ここから始まるのだ。かつての魔王の心は変わらぬアルトの無自覚な世直し快進撃が。

 

追われし者達の居場所を作りたいと魔王になり、人と魔族が手を取り合える世の中を願っていたかつての魔王。その志はアルトの心の中、変わらぬ芯として確かに根付いていたから。

 

 

絡んできた不良に説教し舎弟としたかと思えば、騎士団の面々に時に喝を入れたり、引きこもっていた勇者を引っ張り出したり。

 

「賢者たるもの、困っている人のピンチには身を挺してでも飛び込むべし!」

(だから貴方は賢者じゃないっつーの!)

 

他の団のメンバーであるセピア(表紙左)達をも巻き込み、「賢者」として心のままにまっすぐに。何処までも快活、真っ直ぐ。だからこそまるで竹を割ったような爽快感があるのは自明の理である。

 

コメディ八割、シリアスの皮を被ったコメディ二割。だからこそ何も考えず心から笑える、元気になれるのがこの作品なのだ。

 

サトウとシオ先生のファンの読者の皆様、ラスダンシリーズに乗り遅れた読者の皆様、ただ笑いたい読者の皆様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

信じてくれ! 俺は転生賢者なんだ ~復活した魔王様、なぜか記憶が混濁してるんですけど! ?~ (GA文庫) | サトウとシオ, ななせめるち |本 | 通販 | Amazon