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読書感想:僕を成り上がらせようとする最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で無力なりに力を振り絞って努力し、無力なままでは掴むことのできなかった成果を掴み取って見せた我等が主人公、クロス君。だがしかし、画面の前の読者の皆様も既に感づいてはおられないだろうか。こういう世界観の場合起こり得る、ここから先の騒動の原因を。
この世界においては魔物は確かに恐ろしい存在である。だが、それと同等か時にそれ以上に恐ろしい存在というものは確かにいる。それは、「人間」という存在である。封建的な身分制度が存在するこのような世界において、身分が上位の存在に目を付けられるのは厄介な事極まりない。
だが、前回に成し遂げた危険度4の強力な魔物の討伐を成し遂げたという戦果は目を付けられずとも注目されるだけでも十分な戦果であり、貴族が彼と、共に討伐を成し遂げたジゼルに目を付けるのは当然の流れである。
そんな、脅威がすぐそばまで迫っている事をまだ知らぬクロス。彼は今、少しだけ関係が改善され仲良くなったジゼル達と共にパーティを組み、迷宮へと挑んでいた。
仲間と共に迷宮へ、それは彼に取って何よりも得難き成長の為の機会。それに比するかのように、最強な師匠たちによる修行もまた、次の段階へと移っていく。
今まではスキルと剣技だけだったけれど、新たな段階に進む為に必要な力。それは魔法。師匠たちが望むのは彼が魔法も剣技も使いこなす魔法剣士となる事。
新たな力を得る為の修業に励む中、時には洗濯のお手伝いをしたり、一緒に闘技場に行ったり、夜の大人の店で変な時間を過ごしてみたり。
だが、いつものように賑やかな時間を過ごすクロス、そしてジゼルを狙い今巻の敵役である貴族の子女、カトレアの入念に準備を重ねた策が牙を剥く。
自分達の練習場所を巡って巻き起こる決闘。敵は自分達より格上ばかりな大人ばかり。対するこちらは孤児院の子供達を中心とした格下ばかり。
普通に考えれば絶望的なこの状況。だが、クロス達を舐めてかかった大人達はすぐに後悔する事となる、彼等を舐めてかかった事を。
勝負を分けたのは、クロスが最強の師匠たちに鍛えられていたからか、否、そうではない。敗因は彼等の、絆とつながりの強さ、心の強さを侮った事。
「やっぱり僕、どうしても皆さんに感謝の気持ちが伝えたくて」
そして、感謝の心を忘れぬが故の彼の強さを知らぬが故である筈。
しかし、哀しいかな。確かに重ねた功績、そして打ち立てた貴族潰しという功績は更なる波乱を招く呼び水となる。
だからこそ、きっとここから、本当の始まりとなる筈である。
僕を成り上がらせようとする最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場 (2) (ガガガ文庫 あ 11-22) | 赤城 大空, タジマ 粒子 |本 | 通販 | Amazon