前巻感想はこちら↓
さて、この戦国歴史ファンタジーラブコメと言っても過言ではないこの作品は、今巻は怒涛の第三巻という売り文句がついている。では一体、どういう意味での怒涛であるのだろうか。
さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様に一つ問うてみたい。歴史改変ものにおいて重要な点であり面白さを出していくという部分は、誰も知らない歴史を創り出せるという事であろう。歴史の整合性などバランスを取るべき部分などがあり大変な所であり腕の見せ所である。では、歴史改変ものにおいて基本的にあまり変わらぬものとは何だろうか。
その答えの一つは、地震や台風などの天災である。自然の強大な力による大災害は、超常的な力を以てでもしない限り、止められぬものである。
そしてこの戦国時代が終わり安土幕府なる未知の幕府が始まった本作においても、逃れられぬ歴史の教科書にも載っている天災が巻き起こる。その名は天正の大地震。数々の城が倒壊し、数々の大名の死を招いた大地震である。
無論、かの地震においては信長様や真琴が座する安土周辺もまた被害を免れる事は出来ず。真琴に出来る事は現代の知識と経験による被災地の復興と被災者の救助といった後出しの政策のみ。
そんな中、真琴の心を更に揺らす出来事が巻き起こる。それはこの世界だからこそのイベント、天海により扇動された反織田の大名連合による反乱である。
それだけであれば、何処でも起こり得るものだったのかもしれない。しかし、将軍である信長様に逆らうと言う事は反逆でしかなく。信長様の一門である真琴もまた、闘いからは逃れられず。
そう、逃れられないのである。今までは何となく関わる事もなく、その手で誰かの命を断てど戦乱に関わる事は無かった。だが、もう無関係ではいられない。この世界で生きていく以上、逃れられぬのだ、戦争からは。
自分の指揮で誰かの命が炎に消え。自分が献策した事で、多数の命が戦場に散り。
その全てから逃れられぬ事は出来ず、そして負ける事は許されぬ。もう彼には大切な人達がいるから。
沢山の人々の命を奪う、その責任を必死に受け止め、全部背負わんとばかりに見届け必死にもがいて。
「私だって、真琴様の側室なんですけど、話しなさいよ。私だって姉上に負けないくらい真琴様のこと、・・・・・・好きなんだからね」
そんな彼を、身体だけでなく心でも繋がった茶々が必死に支え。お初もまた、抱えているもの、秘密にしていることを背負いたいと彼へと迫り。
本当の意味で平和を導くために、避けられぬ戦い。国内を纏めるという意味で本当にこれで最後にすべき戦いが繰り広げられる今巻。
前巻まで楽しまれた読者様、少し覚悟していただきたい。今巻は少しシリアスである。だがその分面白いのも、確かなのである。