読書感想:百合に挟まれてる女って、罪ですか?

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は百合の間に挟まりたいであろうか。百合の間に首尾よく収まれれば両手に花となるかもしれないが、その為に入りたいかと聞かれるとどうだろうか。

 

 

とある都市に、長きにわたり対立する二つの極道組織があった。その名は神枝組と久利山組。永い間にわたり対立し、主導権を争い七番勝負を繰り広げれど決着のつかなかった二つの組。今度こそ、決着をつけんと勝負の内容として選ばれたのはターゲットを誘惑し、篭絡した方の勝ちという言わばハニートラップ対決。

 

が、しかし。娘を傷物にしたくないという理由で偶々選ばれてしまったターゲットが一人。それは二十三歳、冴えないフリーターの女性、茉優(表紙中央)である。

 

彼女の元に送り込まれた、極道の娘な刺客の二人。神枝組の娘、楓(表紙左)。久利山組の娘、火凛(表紙右)。

 

「私は茉優ちゃんを迎えに来た魔法使いさん役かな?」

 

「だって、茉優ちゃんは私と、付き合うんだもの」

 

楓が何処か悪戯っぽく、おどけたりしながらも真っ直ぐに距離を詰め。

 

「茉優ちゃんは、ぜったい、私と幸せになるんだよね?」

 

火凛がゆるふわに、何処か小悪魔的に距離を詰めてくる。

 

そんな二人の間であわあわと慌てながら、流されるままに慌てる茉優。だが、彼女はターゲットとして純粋に過ぎた。今まで誰の特別にもなれず、愛されてこなかったからこそチョロくて、だけど今まで彼女達が合った事のないその純粋さが、距離感と調子を狂わせる。

 

そして茉優というフィルターを通して、向き合う事となる少女が二人。それは勿論、火凛と楓。

 

「負けないから、火凛」

 

「またいつものようにかっさらってあげるからね、楓」

 

茉優の前で見せていた顔を見せられず、本音で正面から斬り合って。

 

「二度も、あたしを捨てたりさせない」

 

だけど、普通になりたいという楓を火凛は繋ぎ止めようとした。彼女に勝ち続け、からかい続ける事を選ぼうとした。それは何故か。

 

それは、あの日自分の孤独を満たしてくれたのは彼女だけだったから。彼女になら初めてをあげても良いと思ったから。

 

そこにあるのは何処までも真っ直ぐに、そしてのしかかるように重い愛と言う名の感情で。

 

それは茉優に対しても同じで。まるで普通の女の子のように扱ってくれた。だからこそ彼女達は、確かに彼女を好きになって。

 

正にガルコメ三角形。普通になりたい、幸せになりたい。そんな細やかな幸福を求める三人が出会い、創り出す形は少し歪かもしれないけれど。だけど確かに、今ここにしかない特別なのである。

 

 

賑やかでバチバチ、だけど何処か明るくて重い。ガルコメの神髄を見てみたい読者様は是非。

 

きっと満足できるはずである。

 

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